相続で譲り受けた不動産の名義変更

相続した不動産の名義変更は必要?必要書類・費用・手順もご紹介

相続により譲り受けた不動産は、名義変更手続きを行わなければ所有者は前の方のままです。では、相続後に名義変更しないままでいたら何か問題になるのでしょうか。こちらの記事では、名義変更の必要性と名義変更を行うメリット・デメリット(リスク)について、また具体的な手続きに必要な必要書類と気になる費用についてもご紹介していきます。

目次

財産には所有者の名義を登録するものと、そうでないものがあります。現金や絵画・楽器などには所有者の名義はありませんが、自動車や土地・建物などには所有者の名義を登録する制度があり、通常は購入した時点で所有者の名義を登録することになっています。
相続した土地や建物を、名義変更しないままでいたら一体どうなるのでしょうか?罪に問われるのでしょうか?それとも特に何の問題もないのでしょうか?
本日は、土地を相続した場合の名義変更についてさまざまな角度から解説します。

相続の際に名義変更は必要?

国土交通省が2016年に行った地籍調査によると、所有者不明の土地の面積は約410万haにのぼり、これは九州の土地面積(約368ha)以上であることが分かりました。また最後の登記から50年以上経過した土地は、大都市圏で6.6%、中小都市では何と26.6%にものぼることが判明しました。

「最後の登記から50年以上経過している」ということは、最低でも1世代は経ているわけですから、大都市では15件に1件、中小都市では4件に1件以上の土地が、所有者の所在が不明のまま現状放置されているわけです。

そもそも「登記」とは

そもそも「登記」とは何でしょうか?登記とは、土地や建物を「自分が持っている」ということを世の中の人に公示するための制度です。また取引において第三者に不測の損害を被らせないための制度でもあります。

土地の登記簿謄本をご覧いただくとお分かりのとおり、不動産登記は、不動産の物理的現況を公示する「表題登記」と、権利関係を公示する「権利の登記」の2つに分かれています。

表題登記とは

建物表題登記とは、国が建物の現況を把握し、また市区町村が固定資産税や都市計画税を課税するために必要な登記のことをいいます。

この建物表題登記は義務化されており、建物を新築してから1ヶ月以内に登記申請をしなければ、10万円以下の過料を国に支払わなければなりません。

権利の登記とは

いっぽう権利の登記とは、「この土地は私の土地だよ」と主張するための登記です。

土地の権利を第三者に明らかにすることにより対抗力を生じさせるためのものなのですが、実は民法では登記する・しないに関係なく売り手と買い手の意思が合致した時点で権利変動が起こるとされています。

法律上の立て付けがこのようになっているため、この権利の登記は義務化されていないわけです。

名義変更しなくても罰則なし

このように、権利の登記が義務化されていないため、土地や建物を相続しながら名義変更をしなくても、何の罰則もありません。日本中に所有者不明土地が増えているのは、このような理由からなのです。

名義変更しないままにしておこう!というわけにはいかない理由

権利の登記は、土地の所有者の権利を明らかにし、対抗力を生じさせるためのものです。それを行わなければ、第三者に対して「この土地が自分のものだ」という証明が出来なくなってしまいます。

そうなれば他人が自分の土地を不正利用していてもただちに対抗することは出来ませんし、もちろん担保に入れたり売買したりすることもできません。

これ以外にも名義変更しておかなければさまざまなデメリットが生じますが、それについては次章で詳しくご説明します。

相続した土地の名義変更を行うメリットとデメリット

それではここで、相続した土地の名義変更を行うメリットとデメリットについてまとめてみます。

名義変更を行うメリット

ではまず名義変更を行うメリットから見てみましょう。

メリット① 売却することができる

名義交換を行えば自分の土地であることが証明できるため、売却することができるようになります。もちろん担保に入れて融資を受けることもできますし、他人に貸して地代を受け取ることもできます。

このように名義変更を行うと、さまざまな経済的な利益を享受することができるようになります。

メリット② 土地の所有権を確定し、次の世代に遺産として残せる

都市部でなく地方などでは、相続時に遺産分割協議書を作成せず、口約束だけで土地などの財産を相続することを決めることがあります。

この場合、このまま名義変更を行わないでおくと、次の世代に代替わりした後でこの土地の所有権を主張することが難しくなってしまいます。

土地の名義変更を行っておけば、このようなトラブルを未然に防ぐことができます。

名義変更を行わないデメリット(リスク)

では次に、名義変更を行わないとどのようなデメリット(もしくはリスク)があるのかを見てみましょう。

デメリット(リスク)① 時間が経てば経つほど名義変更のための手続きが困難になる

名義変更を行うためには他の相続人に署名捺印してもらわなければなりません(法定相続の場合)。しかし時間が経って代替わりしてしまうと、人数が増えてしまう上に連絡を取ること自体も難しくなってしまい、手続きそのものが困難になってしまいます。

デメリット(リスク)② 他の相続人の気が変わる場合がある

遺産分割協議の場では口約束で土地の相続が決まったとしても、時間が経てばお互いの経済的な状況も変わり、それにともない他の相続人の気が変わってしまう場合があります。

こうなると土地の相続権を主張することができませんので、名義変更の手続きそのものが困難になってしまいます。

デメリット(リスク)③ 他の相続人の債権者に、法定相続分だけ登記されてしまうことがある

他の相続人に借金がある場合、その債権者は債務者である他の相続人に代わって法定相続分で登記を申請することができます(これを「債権者代位」といいます)。他の相続人の持ち分の土地は債権者に差し押さえられてしまうため、こうなると名義変更ができなくなってしまいます。

この場合相続時に遺産分割協議書を作成し、あなたがこの土地を相続することが決まっていたとしても、対抗することはできません。

相続した土地の名義変更には義務も期限もありません。しかしそのまま放置しておくと、このようにさまざまなデメリットが生じる可能性があり、最悪の場合名義変更自体ができなくなってしまうことがあります。

やはり土地の相続が決まったら、できるだけ速やかに名義変更を行うべきでしょう。

土地の名義変更を行う場合の具体的な手順とその流れ

相続したまま名義変更していない土地を名義変更する場合、以下の手順に沿って行います。

ステップ① まず土地の現況を確認する

法務局で該当する土地の登記簿謄本を取得し、土地の所有者が誰になっているのかを確認します。なお、当該土地の所在地を管轄している法務局でなくとも登記簿謄本を取得することはできますので、遠方にお住いの場合、お近くの法務局でも手に入れる事ができます。

ステップ② 相続人を確定し、誰が土地を相続するのかを明確にする

土地の所有者(被相続人)が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を収集し、相続人を特定します。また相続人の中の誰がこの土地を相続するのかを決めるため、相続人全員で協議し、遺産分割協議書を作成します(法定相続の場合)。

ステップ③ 登記のための申請書を作成する

土地の名義変更を行うためには、法務局で登記の申請をしなければなりません。そのための申請書類を作成し、遺産分割協議書や戸籍謄本などの添付書類をまとめます。

ステップ④ 登記の申請~登記完了

土地の所在地を管轄している法務局に申請書を提出し、登記の申請を行います。遠方にお住いの場合であれば、登記申請書を郵送することもできます。

登記自体は大体1週間~10日前後で完了します。

名義変更の際に必要な書類と費用

それでは、具体的に土地の名義変更を行った場合に必要な書類とその費用についてまとめてみます。

土地の名義変更に必要な書類について

名義変更を行う場合に必要な書類は以下のようになります。

登記申請書 法務局のホームページからダウンロードすることができます
被相続人の戸籍謄本 本籍地が生まれてから一度も変わってなければ1枚でOKですが、本籍地が移動している場合には、生まれてから亡くなるまでの本籍地の移動がつながるようにすべての戸籍謄本が必要となります
相続人の戸籍謄本 相続人の住民票所在地を管轄している市区町村役場で発行してもらうことができます
相続人の住民票 相続人の住民票所在地を管轄している市区町村役場で発行してもらうことができます
名義変更する土地の固定資産税評価証明書 当該土地が所在している市区町村役場で発行してもらえます
相続関係説明図 相続関係説明図とは、被相続人の関係を図にまとめたものです。作成は任意ですが、添付すると戸籍謄本を提出しても原本還付をしてもらえます。
相続人の印鑑証明 相続関係説明図とは、被相続人の関係を図にまとめたものです。作成は任意ですが、添付すると戸籍謄本を提出しても原本還付をしてもらえます。
遺産分割協議書(法定相続の場合) 作り方に特別なルールはありませんが、最低限「誰がこの土地を相続するのか」が記載されていなければなりませんし、最後に相続人全員の実印による捺印が必要となります。
遺言書及び検認調書(遺言による相続の場合) 相続人が残した遺言書と、遺言書を開封する時に家庭裁判所が作成した検認調書を用意します。

土地の名義変更に必要な費用について

不動産の登記は司法書士の独占業務と決められています。専門家である司法書士に登記を依頼する場合、だいたい相場としては8万円~15万円程度の報酬が必要となります。

ただし、2世代に渡り名義変更が行われてなかった場合や相続人の特定が困難である場合、また遺産分割協議書を作成していない場合など、状況に応じてその報酬額は変動します。

自分で名義変更することは可能?

土地の名義変更は、自分でする事も可能です。しかしほとんどの人にとって初めてのことでしょうから、法務局の登記相談を利用し、何度も足を運んで作成した書類などをチェックしてもらう必要があるでしょう。

仮に名義変更をする土地の固定資産税評価額が5,000万円であるとすると、司法書士に登記を依頼する場合とご自分で登記をする場合を比較してみると、費用は以下のようになります。

  • 司法書士に依頼する場合
      • 登録免許税・・・20万円(固定資産税評価額×0.4%)
      • 司法書士報酬・・・8万円~15万円前後
      合計・・・28万円~35万円

 

  • 自分で登記する場合登録免許税・・・20万円(固定資産税評価額×0.4%)
    司法書士報酬・・・0円
    合計・・・20万円

司法書士に依頼しなければ報酬分だけ費用は減りますが、手間はかなりかかります。特に相続人の特定が難しい場合などは書類作成の難易度はかなり高くなり、また時間もかかるため、そのような場合にはやはり専門家に依頼した方が無難でしょう。

土地の名義変更の際に気を付けるべき注意点

最後に、土地の名義変更の際に気を付けるべき注意点についてまとめてみます。

注意点① 書類は完璧にしてから他の相続人に押印してもらう

司法書士に依頼する場合は問題ありませんが、ご自分で書類を作成する場合、かなりの確率で何度も失敗を繰り返します。そのたびに他の相続人に印鑑をもらいなおしていると、手間もかかりますし、何より不信に思われてしまう可能性もあります。

注意点② 物件調査は必ず行う

土地の名義変更を行う場合には、物件の実地調査を必ず行いましょう。その物件に行くために私道を通らなければならない場合には、私道持ち分を持っている可能性があります。また近隣の住民と共有で、ゴミ置き場の持ち分を持っている場合もあります。

私道部分が抜け落ちたまま登記が完了してしまうと、建築基準法を満たさなくなり不動産を建てることができなくなってしまう場合があります。

注意点③ 一度申請が通ってしまうとやり直しが難しい

登記の申請は書類上間違いがなければ、そのまま通ってしまいます。しかし何らかの理由で間違っていた場合、後で訂正するためには書類をすべて作り直さなければなりませんし、その間に相続人同士や権利関係が申請当時と変わってしまう場合もあります。

このように名義変更が終了してからのやり直しはかなり難しいため、申請する前には何度も確認しておくことが大切です。

まとめ

相続した土地の名義変更には期限が決められているわけではありませんし、変更義務もありません。しかしそのまま放置しておくと、最悪の場合相続すること自体が困難になる可能性すらあります。

このような事態を避けるため、土地の相続が決まったらできるだけ速やかに名義変更を済ませるように心がけましょう。

相続人の関係が複雑でなければご自分で名義変更することも十分に可能ですし、自力での申請はハードルが高いと感じた場合には、司法書士に依頼する事もできます。

土地を残してくれた人やご自分、またこの土地を受け継ぐ人のためにも名義変更は必ず行っておきましょう。

監修者情報

税理士 藤井 幹久 (ふじい みきひさ)

マルイシ税理士法人 代表社員税理士

専門分野: 不動産税務、相続・事業承継対策、税務顧問、セミナー講師等

不動産をお持ちの方(個人及び会社)の、税理士業務と相続・事業承継対策を専門としています。これまでに10,000件を超える不動産と相続に関する税務相談を行ってまいりました。

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