相続の全体像

相続の基本をわかりやすく解説〜手続きの流れや計算方法など〜

「相続の基本をわかりやすく知りたい」という人向けの記事です。基礎用語の意味から、相続の流れと手続き、相続税の対象となる財産と計算方法まで幅広い領域をカバー。これを読んでいただければ相続の基本を全般的にしっかり抑えられます。

監修者情報

税理士 藤井 幹久 (ふじい みきひさ)

マルイシ税理士法人 代表社員税理士

専門分野: 不動産税務、相続・事業承継対策、税務顧問、セミナー講師等

不動産をお持ちの方(個人及び会社)の、税理士業務と相続・事業承継対策を専門としています。これまでに10,000件を超える不動産と相続に関する税務相談を行ってまいりました。

目次

相続とは?相続人とは?手続き全体の流れ


相続をスムーズに行うためには、まず「相続」や「相続人」といった重要キーワードの意味を正しく知る必要があります。併せて、相続の流れと各手続きについても学びましょう。

相続とは?相続税とは?

相続とはある人(被相続人)が死亡したときに、配偶者や子などの法定相続人(以下、相続人)、または、遺言で指定された受遺者が遺産を引き継ぐことをいいます。ちなみに遺産には、プラスの資産と債務(借金)があります。相続税は遺産を被相続人から相続人に移すときに課税される税金です。

相続人になるのは誰?

相続人として遺産を受け継ぐことができるのは、配偶者(夫または妻)と血族です。配偶者はどのようなケースでも相続人になれます。血族は被相続人との関係で順位が決まっていて、順位が高い人から相続人になれる権利があります。

優先順位 血族の種類
第1順位 子および代襲相続人
第2順位 両親などの直系尊属
第3順位 兄妹姉妹および代襲相続人

なお相続人の子が亡くなっている場合、その子の子である孫が代わりに相続できます。この仕組みを「代襲相続」といいます。同様の考え方で兄妹姉妹に相続する権利があるケースで、当人が亡くなっている場合はその子である甥や姪が遺産を受け継げます。

相続全体の流れと各手続き

遺産を相続するまでには、たくさんの手続きをこなしていかなければなりません。この手続きは人によって内容が異なり、それぞれの手続きには期限が設定されています。スムーズな相続を行うためには、全体の流れとどのタイミングでどんな手続きが必要かを把握しなくてはなりません。その内容をまとめると次の4ステップになります。

目安期間 主な手続き
7日以内 ●死亡届の提出
3ヶ月以内 ●遺言書の存在の確認●相続人の確定●遺産・負債の調査●相続放棄・限定承認の申述
4ヶ月以内 ●準確定申告
10ヶ月以内 ●相続遺産の確定・評価●遺産分割協議●相続税の申告・納付

それぞれのステップの内容を詳しく見ていきましょう。

〈ステップ1〉7日以内にやるべき手続き

被相続人が死亡したとき、真っ先に行うべき手続きが死亡届の提出です。届出期限は7日以内となっていますが、死亡届を提出しないと火葬や埋葬の許可証がもらえないため速やかに提出するのがよいでしょう。届け先は故人の本籍地や死亡地などになります。

〈ステップ2〉3ヶ月以内にやるべき手続き

3ヶ月以内に行うべき手続きは種類が多いです。まずは遺言書の存在を確認しましょう。 公正証書遺言は公証役場に保管されています。その他の遺言書が自宅などから発見された場合、封がしているときは家庭裁判所で開封しなくてはなりません。

遺言書の有無に関わらず、相続人を確定させること、遺産や負債の調査を行うことは必須です。この調査内容に基づき、相続放棄または限定承認の必要があるときは(詳しくは後述)家庭裁判所に申述します。

〈ステップ3〉4ヶ月以内にやるべき手続き

死亡した人に事業や不動産による収入があった場合、被相続人に代わって相続人が所得税の申告をする必要があります。通常、所得税の確定申告期限は毎年3月15日ですが、年の途中で亡くなった場合は「相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内」に申告しなければなりません。この決まりを「準確定申告」といいます。

〈ステップ4〉10ヶ月以内にやるべき手続き

10ヶ月以内にやらなければならない最重要な手続きは、相続税の申告・納付です。この相続税の納付を滞りなく行うためには、どんな相続遺産がありそれぞれの評価額がいくらかを確定した上で、遺産分割協議を無事に終わらせることが課題となります。

相続方法には3つの選択肢がある


一口に相続といっても下記で紹介する「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3つの選択肢があります。同じ相続でも内容が大きく異なります。

単純承認

単純承認は、もっとも一般的な相続の選択肢です。その内容は、プラスの資産と債務(借金)の両方を相続人が相続するというものです。なお、プラスの資産は受け継いで債務は放棄することはできません。必ず資産と債務をセットで相続するのがルールです。そのため、資産と債務を相殺したときに、資産の方が多く残るケースで採用されるのが普通です。

単純承認の3つの注意点

単純承認の注意点のひとつ目は、一定期間内に限定承認または相続放棄の意思を示さなければ、自動的に単純承認を選択したと民法でみなされることです。一定期間とは「相続があったことを知った日から3ヶ月以内」となっています。

注意点の2つ目は、遺産分割協議や手続きが終わっていないのに、他の相続人に無断で相続遺産を処分した場合でも、単純承認がされたと民法でみなされることです。例えば、他の相続人に無断で預貯金を引き出し、何かを買ったケースなどが当てはまります。

注意点の3つ目は、限定承認は相続放棄をいったん選択しても、悪意のある背信行為(故意に相続財産を隠すなど)があったときには単純承認となることです。

限定承認

限定承認は制約が多いため、ほとんど選択されていない相続方法です。相続の際にプラスの資産と債務のどちらが多いかわからないケースなどで使われます。プラスの資産の範囲内で債務を返してそれでも資産が残っているときには、それを相続できます。逆に、借金が残っている場合は相続人にはそれを返済する義務はありません。

限定承認を使うときの制約には、相続人全員が限定承認に同意しなければならない、財産目録を作った上で家庭裁判所の手続き(放棄の申述)を踏まなければならないなどの条件があります。

相続放棄

相続放棄はプラスの資産よりも債務の方が多い場合に選択される方法です。「相続があったことを知った日から3ヶ月以内」に相続放棄の意思を示せば、相続人は債務を返済する責任を負わなくて構いません。

なお、限定承認と同様、家庭裁判所の手続きを踏まなければなりませんが、財産目録を作る必要はありません。

相続税はいくらかかるの?計算方法は?


相続税がかかるのは、一定の遺産を受け継ぐ相続人だけです。どのような場合に相続税がかかるのか、計算方法はどのような内容かを見ていきます。

相続税の課税対象となる財産とならない財産

相続税をきちんと申告・納付するためには、まず「相続税のかかる財産」と「相続税のかからない財産」を仕分けしなくてはなりません。被相続人が所有していた大半の財産が相続税の対象になりますが、一部除外されるものもあります。その一例は次の通りです。

相続税のかかる財産例

●土地(宅地、山林、畑、駐車場など)●建物(一棟、区分、倉庫など)●現金・預貯金●有価証券(上場株式、投資信託、公社債など)●自動車・船舶●美術品●宝石・貴金属●家具●ゴルフ会員権●リゾート会員権●売掛金●各種権利など

相続税のかからない財産例

●墓地・墓石・仏壇・仏具●相続によって取得した保険金のうち一定額(500万円×法定相続人の人数)●相続によって取得した退職手当金のうち一定額(500万円×法定相続人の人数)●国や地方自治体、特定の公益法人などに寄附した財産など

併せて、被相続人が生前に所有していた財産ではないものの、死亡したことで発生し、相続財産に近いものは「みなし相続財産」として課税されるものもあります。

みなし財産の例

●生命保険金●被相続人の死亡前3年以内に贈与された財産など

相続税の基礎控除額

正味の遺産額(詳しくは次項)が下記に示す「基礎控除額以下の場合」には、相続税はかかりません。なお、法定相続人の人数が増えるほど基礎控除額は多くなります。

基礎控除の公式
3,000万円+600万円×法定相続人の数

相続人の人数と基礎控除額

法定相続人の人数 基礎控除額
1人 3,600万円
2人 4,200万円
3人 4,800万円
4人 5,400万円
5人 6,000万円

相続税の計算方法

基礎控除の公式を参考にしながら、相続税の計算例を見てみましょう。計算の流れは、まず正味の遺産額を出します。正味の財産とは「相続税のかかる財産」と「みなし財産」を合わせた総額から債務や葬儀代などを引いた金額です。

次にここから基礎控除額を差し引いて「課税される財産額」を出します。この「課税される財産額」に相続税率をかけると、最終的な相続税を割り出すことができます。下記がその一例です。

※法定相続人の人数:配偶者、子2人の計3人の場合の例

1.まず正味の遺産額を出す

(財産内容)
預貯金 7,000万円
不動産 4,600万円
生命保険金 保険支払額5,000万円−(500万円×3人)3,500万円
【トータルの遺産額 1億5,100万円】

上記から葬儀費用300万円を差引
【正味の遺産額 1億4,800万円】

2.正味の遺産額から基礎控除額を差し引き、課税される財産額を出す

基礎控除額:3,000万円+600万円×3人=4,800万円
課税される財産額:正味の財産額1億4,800万円−基礎控除額4,800万円=1億円

3.課税される財産額をもとに各相続人の財産額を割り出す

今回の場合、配偶者は1/2、子は1/4の割合で財産がもらえます。

配偶者:1億円×1/2=5,000万円
長男:1億円×1/4=2,500万円
次男:同上

4.上記に相続税率をかけて合算すると相続税額が出る

相続税率とそれに伴う控除額は、国税庁が公表している速算表を使うと簡単にわかります。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

出所:国税庁 「No.4155 相続税の税率」

配偶者:5,000万円×相続税率20%−控除200万円=800万円
長男:2,500万円×相続税率15%−控除50万円=325万円
次男:同上
【相続税総額 1,450万円】

ここで解説したのは、あくまでも相続税の計算の流れをつかむためのイメージです。実際に相続税がかかりそうな場合は、各分野の鑑定士などに評価額を割り出してもらい、税理士などに相続税額の計算を依頼するのが賢明です。

損をしない相続財産の使い方とは?

相続財産が入ったことで気が大きくなり、散財してしまうケースもよくあります。長期的な視点で資産運用を行えば、その価値を増やすことも可能です。人生の充実のために遺産を生かすことが大切ではないでしょうか。

資産運用の選択肢の基本

一口に資産運用といってもさまざまな選択肢があります。それぞれメリット・デメリットがあるため、いくつかを組み合わせて分散投資をしましょう。お互いのウィークポイントがカバーされ長期的な安定感が期待できます。

メリット デメリット
預貯金 元本割れしない
必要なときにすぐ引き出せる
低金利で増えない
上場株式 値上がり益が期待できる
配当金が期待できる
値下がりリスクが大きい
投資信託 NISAなどと組み合わせやすい 手数料や運用コストがかかる
不動産投資 資金にレバレッジがかけられる
安定した長期運用に向いている
値下がりしても一定の資産価値が残る
現金化のときに手間がかかる

資産運用で特に不動産投資がおすすめの理由

「3代で財産はなくなる」という有名な言葉があります。これは資産家にとって相続税の負担があまりにも重いので、3代続けば財産の大半が失われるという意味です。たしかに預貯金は評価額100%、金融資産は時価で資産価値が評価されるため相続税による目減りが大きいです。

一方、不動産は相続税の評価額が低いので、現金を不動産化しておくことで相続税対策が可能になります。その際、マイホームだけでなく、マンションやアパート経営などの不動産投資を選択すると、さらに相続税評価額が圧縮されます。

具体的には、賃貸物件が建っている土地は約2割の評価減、賃貸用の建物は約6割の評価減になります。この仕組みを上手く使えば、子孫へ効率的に遺産を残すことができるのです。

【ケース別】専門家への依頼方法


相続手続きをスムーズに進め、トラブルを防ぐには、相続に関わる専門家の力を借りることもポイントになってきます。一般的に依頼することが多いのは税理士、弁護士、司法書士などですが、それぞれに得意分野に応じて使い分けることが大切です。

税理士に依頼する場合

相続税を節税する、または、相続税の申告漏れを防ぐなど、相続税に関わる対応をしっかり進めたいケースでは税理士に依頼します。そもそも相続税が発生するのか、発生するならどれくらいの税額か、節税するにはどうしたらいいかなど税金に関わることをトータルで相談できます。

税理士の実務面では、相続財産の評価、遺産分割協議書の作成、申告手続きなどのサポートが可能です。遺産分割協議においては、税理士が全面的に主導してその内容をまとめることはできません(弁護士の担当になります)。ただし、節税という観点から遺産分割協議を主導・作成することは可能です。

弁護士に依頼する場合

法律に基づき、依頼人の利益を守るのが弁護士の役割です。相続トラブルが発生したときに他の相続人との交渉・調整を行うこともよくあります。さらに、相続トラブルが調停や裁判に発展したときに代理人になることも可能です。加えて、相続発生前に被相続人の遺言書作成のサポートをするケースもあります。

実務面では、遺産分割協議書の作成や調停の代理人などがあります。相続人の居所が不明な場合などの調査、相続財産が多岐にわたる場合の調査などもできます。

弁護士に依頼するときの考え方は大きく2つあります。ひとつ目は、相続トラブルを起こさないため、遺産分割協議にはじめから同席してもらうものです。ふたつ目は遺産分割協議がまとまらないので(相続トラブルが発生したので)対応してもらうというものです。

司法書士に依頼する場合

大半の相続には、財産に土地や建物などの不動産が含まれます。この不動産を被相続人から相続人に相続登記(所有権移転)する手続きをしたいときに依頼するのが司法書士です。不動産の相続登記は法律で義務付けられているわけではありませんが、後々の相続トラブルを防ぐという観点では相続時に手続きをしておくのが賢明です。

また、相続財産の中でも、車や株式などの名義変更手続きをしたい場合は行政書士に依頼します。なお、司法書士、行政書士ともに遺言書や遺産分割協議書の作成が可能です。

相続の専門家に依頼するときの注意点

これらの肩書きの専門家全員が、相続に関わる業務を得意にしているわけではありません。そのため、相続の実績を豊富に持つ専門家に依頼するという視点も大切です。

まとめ:相続を無事完了させるには各手続きの前倒しが鍵

この記事では「相続の基本をわかりやすく解説すること」をテーマにしてきました。その内容を振り返ってみます。

▽相続には決まった期間内にやるべき手続きがたくさんあります。中でも最重要な手続きは「相続税の申告・納付」です。これを10ヵ月以内に実行するために、遺言書や相続人の確認、財産調査などを3ヶ月以内に終わらせる必要があります。その上で遺産分割協議を相続人の間で終わらせることでスムーズに相続税納付ができる環境になります。

▽一口に相続といっても3つの種類があります。3ヶ月以内に「限定承認」または「相続放棄」の意思を家庭裁判所に示さなければ、自動的に「単純承認」になるので注意してください。

▽相続があるからといって必ずしも相続税が発生するわけではありません。遺産から諸費用等を差し引いた「正味の遺産が基礎控除額以下の場合」は相続税がかかりません。

▽もらった遺産は散財するのではなく、資産運用によってさらに価値を増やし、人生を充実させることに役立てるのが賢明です。

この記事でおわかりのように、相続では決まった期限内に数多くの手続きをこなさなければなりません。これを無事完了させるには前倒しで手続きを消化していくのが安全です。必要に応じて専門家の力を借りながら、ひとつひとつのタスクを消化していきましょう。

  • ページタイトルと
    URLがコピーされました

不動産と相続の専⾨誌
マルイシメディアの
公式アカウントから最新記事をお届けしています

マルイシメディアを
フォロー