できるだけ早く済ませておくべき
相続登記(不動産の名義変更)とは?必要書類や手続き・申請方法について解説
相続財産には、現金のように相続後に特別な手続きが必要でないものと、土地建物や自動車のように相続後に名義変更の手続きが必要なものがあります。名義変更が必要なものの中でも不動産に関しては、「登記」と言う特別な手続きが必要で、そのためには資料を集め、申請書を作成し、さらに別途費用なども必要となります。
目次
相続登記とは?
それではまず、相続登記とは一体どのようなものなのかを簡単にご説明します。
相続登記とは
冒頭でお話ししたように、土地や建物などの不動産を相続した場合、亡くなった方の名義から新たに相続した人の名義に変更しなければなりません。この手続きを「相続登記」といいます。
相続登記をするためには、その不動産を管轄している法務局へ必要な書類などを提出して行います。
なぜ相続登記を行うのか
実は、相続登記は義務ではなく、罰則もありません。ですから不動産を相続したにも関わらず登記しないで放置しておいたとしても、誰からもとがめられることはありません。
しかし、相続登記を行わないと以下のデメリットが生じます。
- 売りたい時に売れない
- 時間が経過すると登記ができなくなる恐れがある
(注)2024年までに、相続の開始を知った日から3年以内の相続登記が義務付けられる予定です。
義務化された場合、相続登記を行わないと10万円以下の過料(罰金)が課されます。
売りたい時に売れない
相続登記を行わなければ、第三者に対してその不動産の所有権を主張することができません。したがって、名義変更をするまでは売ることも担保に入れることもできません。
時間が経過すると登記ができなくなる恐れがある
たとえば遺産分割協議書を作成せずに口約束だけで不動産の相続を取り決め、その後相続登記を行わないまま放置した場合を想像してみて下さい。
やがて相続人の何人かは亡くなり、その子供が相続権を受け継ぐことになります。このケースで相続登記を行う場合、相続人の子供に押印をしてもらわなければなりませんが、必ずしも押印してもらえるとは限りません。
このように、時間の経過とともに当時の関係者が亡くなる可能性があるため、相続登記ができなくなる恐れが生じてしまいます。
相続登記をしなければこのようなデメリットが生じるリスクがあるため、不動産を相続した場合はできるだけ早く登記を済ませた方が良いでしょう。
相続登記は主に3つのパターンがある
実際に相続登記を行う場合には、以下の3つのパターンがあります。
- 遺産分割協議を行って相続登記
- 遺言通りに相続登記
- 法定相続分通りに登記
それでは、一つずつ見ていきましょう。
遺産分割協議を行って相続登記
遺言書がない場合、法定相続人同士で遺産の分割方法に関する話し合いを行います。これを「遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)」といい、遺産分割協議によって決まった内容を書き記した書類を「遺産分割協議書(いさんぶんかつきょうぎしょ)」といいます。
遺産分割協議によって誰が不動産を相続するのかが決まると、それに基づいて相続登記を行います。
遺言通りに相続登記
遺言書がある場合は、そこに指示された相続人が財産を相続します。不動産についても同様で、遺言書に書かれている通りに相続人が相続し、相続登記を行います。
法定相続分通りに登記
最後に、実際にはあまり行われませんが、法定相続分通りに登記するパターンです。遺言書や遺産分割協議書がなくても、法定相続人であれば単独でも法定相続分だけの相続登記を行うことができます。相続人同士が仲良く、何の問題もなければ法定相続分通りに登記をしても当面は問題ありませんが、実際には遺産分割協議がうまく進まない場合などにこのパターンで登記が行われることがあります。
ただし、不動産はすべて共有になるため、売ることはもちろんのこと、担保に入れることもできません。また、マンションなどの収益物件の場合は、誰が代表者として家賃を受け取るのか、また維持費はどのように払うのかなどの問題が生じることになります。
相続登記に必要な書類は8種類
次に、相続登記に必要となる書類について解説していきます。法務局で相続登記を行う場合、以下の8種類の書類が必要となります。
- 登記申請書
- 不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
- 被相続人の住民票の除票
- 被相続人の出生に遡るまでの戸籍謄本
- 相続人全員分の戸籍謄本
- 遺言書もしくは遺産分割協議書
- 相続人全員分の印鑑証明書
- 固定資産評価証明書
それでは順に、一つずつ解説していきます。
登記申請書
登記申請書は法務局のホームページからダウンロードし、必要事項を記載して作成します。ただし、先ほどご紹介した登記の3つのパターンによって必要な書類の種類が変わるため、間違えないように気を付けなければなりません。
不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
不動産の登記事項証明書は、法務局で取得します。ただし、取得するためには正確な所在地の情報が必要となるため、法務局へ行く前に必ず確認をしておきましょう。
なお、登記所の窓口で登記事項証明書の交付を申請する場合は1通あたり600円が必要となりますが、スマホからオンライン請求をする場合は500円で郵送までしてもらえるため、特別な事情がない場合はオンライン請求をおすすめします。
被相続人の住民票の除票
住民票の除票とは、被相続人が亡くなったことにより住民票から除外されたことを示す書類です。なお住民票の除票は、被相続人が最後に住んでいた市区町村役場で取得することができます。
被相続人の出生に遡るまでの戸籍謄本
相続人を特定するため、被相続人の戸籍謄本を集めます。まず、亡くなった時点での本籍地の市区町村役場で戸籍謄本(または除籍謄本)を取得します。本籍地の転移が過去にあった場合は、転移前の市区町村役場で転移前の戸籍謄本を取得します。これを被相続人の出生まで遡り集めていきます。
相続人全員分の戸籍謄本
相続人の本籍地の市区町村役場で、それぞれの戸籍謄本を取得します。なお、被相続人の場合とはことなり相続人の場合は出生までを遡る必要がなく、現在の戸籍謄本のみで結構です。
遺言書もしくは遺産分割協議書
遺言書がある場合は遺言書を、ない場合は相続人が集まり相続財産の相続方法について協議します。誰が何をどのように相続するのかが決まったら、その内容を書き記した遺産分割協議書を作成し、相続人全員が実印を押印します。
なお相続人が1名の場合は、遺言書がない場合でも遺産分割協議書を作成する必要がありません。
相続人全員分の印鑑証明
遺産分割協議書に押印した印鑑が実印であることを証明するため、相続人全員分の印鑑証明を集めます。なお、印鑑証明は相続人の住民票所在地の市区町村役場で発行してもらうことができます。
固定資産評価証明書
不動産を登記する時に支払う登録免許税を計算するため、当該不動産の固定資産評価証明書を取得します。
なお、固定資産評価証明書は不動産が所在する市区町村役場で発行してもらうことができます。
相続登記申請を自分で行う方法
相続登記を行うためには上述のように多くの書類を揃える必要があり、また申請書も作成しなければならないため司法書士に依頼するケースも多いです。しかし、もちろん相続人がご自身で行うこともできます。
そこでこの章では、相続人がご自身で相続登記を行う場合の流れについて簡単にご説明します。
相続登記申請の流れ
相続登記を行うためには、以下の流れに沿って必要な書類や資料などを作成・収集していきます。
- 被相続人や相続人の戸籍謄本などを集める
- 不動産に関する情報を集める
- 遺産分割協議を行い不動産の相続人を決める
- 相続登記のために必要な書類や資料を作成・収集する
- 法務局へ申請書を提出する
被相続人や相続人の戸籍謄本などを集める
遺言書がない場合は、まず誰が法定相続人になるのかを特定しなければなりません。そのために、被相続人の戸籍謄本を出生時まで遡って集め、同時に相続人の戸籍謄本も揃えておきます。
不動産に関する情報を集める
相続登記を行う不動産の権利書や登記簿謄本などを集め、地番や地目、面積など不動産に関する正確な情報を集めます。
遺産分割協議を行い不動産の相続人を決める
相続人同士で誰がどの財産をどのように相続するのかを話し合い、不動産の相続人を決定します。また、話し合いによって決まった内容に従い遺産分割協議書を作成します。
相続登記のために必要な書類や資料を作成・収集する
前章でご紹介した相続登記に必要な8種類の書類や資料を作成・収集します。
法務局へ申請書を提出する
すべての書類が揃ったら、不動産の所在地を管轄している法務局へ申請書類一式を提出します。なお、作成した書類を事前にチェックしてもらいたい方は、法務局の無料相談を利用するとよいでしょう。
作成に自信のない方や時間のない方は司法書士に依頼するのがおすすめ
資料の収集や書類の作成などに自信のない方や、仕事などで忙しく時間がない方は登記の専門家である司法書士に依頼するのがおすすめです。
安心して任せることができますし、登記のミスを心配する必要もありません。ご自身で登記申請をした場合は、書類に不備があると何度も呼び出され訂正を求められます。このような手間暇や登記の間違いを犯すリスクがご心配な方は、司法書士に依頼した方がよいでしょう。
まとめ
現状では相続登記は義務ではなく、罰則もありません。しかし、そのまま放置しておくと不利益が生じる可能性があるため、できるだけ早く済ませておくべきでしょう。
相続登記については、相続人ご自身でもできますが、作成すべき書類や集めるべき資料がたくさんあり、登記を間違えてしまうと後で大変なことが起きてしまうリスクもあるため、ご心配な方は司法書士に依頼した方が良いでしょう。
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不動産を相続する場合、有効な節税対策はいくつも存在します。しかし同時に、過度な節税対策を税務署に否認されている事例もあります。また、不動産によっては時価が低く相続税評価額の方が高い場合もあるため、生前に整理して現金に換えておいたた方が相続税対策になる場合もあります。
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