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不動産投資における圧縮率と収益性の考え方とは?

監修者情報

税理士 藤井 幹久 (ふじい みきひさ)

マルイシ税理士法人 代表社員税理士

専門分野: 不動産税務、相続・事業承継対策、税務顧問、セミナー講師等

不動産をお持ちの方(個人及び会社)の、税理士業務と相続・事業承継対策を専門としています。これまでに10,000件を超える不動産と相続に関する税務相談を行ってまいりました。

目次

賃貸不動産の節税効果の違い


賃貸不動産の購入には、相続財産を圧縮する効果があり、高い節税効果があります。

相続税の課税額を計算する方法

相続税の課税対象になる額は、主に被相続人(亡くなった人)が相続時に保有している財産の「相続税評価額」の合計額になります。
現金であれば、額面どおりの金額が相続税評価額になることに対し、不動産の場合は、一定の方法で計算した金額が「相続税評価額」になります。

不動産の相続税評価額

「相続税評価額」の計算方法は、土地と建物で異なります。
建物は、市町村が計算する「固定資産税評価額」が、そのまま相続税評価額になります。
土地は、やや複雑です。

❗土地の相続税評価額
土地は、その地目によって評価方法が分かれますので、まず地目の判定と、その評価単位(どこからどこまでを1単位で評価するか)を判断する必要があります。
土地の地目が宅地(建物の敷地になっている土地)の場合、「路線価方式」か「倍率方式」によって評価します。
国税庁の定める路線価(道路に付された価額)のある道路に接する宅地であれば路線価方式、なければ、国税庁の定める評価倍率を使った倍率方式となります。
上記の方法によって計算した不動産の相続税評価額は、購入額に対し、土地はおおむね8割、建物は新築でも5~6割ほどになります。

賃貸不動産によって異なる相続税評価額

不動産の相続税評価額は、自身で住んでいる状態よりも、人に賃貸している状態の方がさらに低くなります。
なぜなら、不動産を賃貸すると、借り主にその不動産を使用する権利が生じるからです。
いくら持ち主といっても、この権利を無視して勝手に不動産を使うことはできません。
そのため、賃貸している不動産の相続税評価額は、

「①:自用の評価額(賃貸していない状態の評価額)」から、
「②:借地権や借家権などの評価額(借り主がその土地や建物を使用する権利の評価額)」
との差額(①-②)

になります。

たとえば、相続税評価額が1億円(①)であるAさんの不動産を、Bさんに賃貸し、Bさんの権利が3,000万円(②)であれば、Aさんの不動産の評価額は7,000万円(①-②)になるということです。
借り主の権利の評価方法は省略しますが、権利の種類によって違いがあります。

不動産の圧縮率と収益性

不動産の圧縮率とは?

相続税の課税対象になる財産が現金であれば、額面どおりの金額が、現金の相続税評価額になります。
しかし、生前のうちにその現金を使って不動産を購入すれば、不動産の購入額と相続税評価額の差によって、相続税の課税対象を引き下げることができます。
不動産の相続税評価額を、購入価額からどれだけ減額できるのか、つまりどのくらい相続税の課税対象を圧縮できるのかを計算した割合のことを、「不動産の圧縮率」といいます。

【不動産の圧縮率の計算方法】
(A-B)/A×100
A:不動産の購入価額
B:不動産の相続税評価額

賃貸不動産の圧縮率は60%を超えることも

たとえば、土地を購入し、そこにマンションを建築して賃貸したとき、その圧縮率は、60%を超えることもあります。

【例】
・土地:購入額1億円
・建物(賃貸マンション):建築費1億円
・賃貸する前の相続税評価額は、一般的な目安をもとに、土地8,000万円、建物6,000万円とします。
【圧縮率の計算】

  • 建物
  • 賃貸している建物は「貸家」として評価します。

    【計算式】
    自用の評価額×(1-自用の評価額×借家権割合×賃貸割合)

    賃貸する前の相続税評価額から、借家権割合(30%)に賃貸割合(0%~100%)を乗じた額を減額します。
    相続時に賃貸マンションが満室(賃貸割合100%)であるとした場合、賃貸した建物の相続税評価額は、4,200万円(6,000万円×(1-30%×100%))になります。

  • 土地
  • 土地は、「貸家建付地」として評価します。

    【計算式】
    自用地評価額×(1-自用地評価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

    賃貸する前の相続税評価額から、国税庁の定める「借地権割合」(30%~90%)に、建物の評価方法で確認した「借家権割合×賃貸割合」を乗じた額を減額します。
    賃貸マンションが満室(賃貸割合100%)であれば、9%~27%の減額ができます。
    仮に最小の9%で減額した場合、土地の相続税評価額は、7,280万円になります。
    さらに、この土地が小規模宅地等の特例における「貸付事業用宅地等」の要件を満たす場合、200㎡までの部分の金額を50%減額できます。
    土地全体に特例を適用できるとした場合、最終的な金額は3,640万円になります。

  • 不動産の圧縮率

建物4,200万円と土地3,640万円で合計7,840万円ですので、この例の圧縮率は60.8%(2億円-7,840万円/2億円×100)になります。

不動産投資で考えるべき圧縮率と収益性のバランス

不動産の圧縮率がいかに高くても、収益力のない賃貸不動産は負の財産です。
賃貸収入がなくても、維持管理費の支払いは続けなくてはなりませんし、そもそも、貸家が全て空室(賃貸割合0%)の場合、貸家や貸家建付地による圧縮効果が得られません。
このように不動産の収益性と圧縮率は無関係ではありませんので、両方ともに優れた不動産を選ぶことが重要です。

圧縮率と収益性が高い不動産物件の条件

人口が増加している地域の不動産

日本の人口は減少し続けていますので、不動産の地域選びは重要です。
5年おきに行われる国勢調査の、2020年の結果を見ると、次の5都県は、前回調査よりも人口が増加し、かつ、その増加幅も拡大しています。

  • 東京都
  • 千葉県
  • 神奈川県
  • 福岡県
  • 埼玉県

(参考)総務省統計局「令和2年国勢調査 調査の結果」
https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2020/kekka.html

不整形地

相続税の節税効果をより高めるために、「不整形地」も検討しましょう。
不整形地は、その使い勝手の悪さを考慮し、宅地の評価に用いる路線価を「不整形地補正率」によって、最大40%減額することができます。
この減額補正の割合には、土地を四角形で囲んだ時、かげになる部分の割合から画一的にはじき出すという特徴があるため、工夫すればマンションやアパートを建築できる土地でも、減額できる可能性があります。

単身世帯向けの賃貸住宅を検討する

ファミリー向けの広い物件の方が一部屋あたりの家賃を高く設定できるため、収益性が高いと思われるかも知れません。
しかし、退去したときのダメージが大きい上、決定権者が1人でないことから、契約までの意思決定が遅いなどのデメリットがあります。
一般的には、単身世帯向けの部屋数を多く確保することの方が、退去したときの空き室リスクを軽減でき、回転も速く安定性が高いと考えられています。

まとめ

不動産の圧縮率について解説しました。
しかし、不動産を買って賃貸すれば、すべての人がこの圧縮効果を得られるわけではありません。
圧縮率には、いろいろな注意点があります。
たとえば、親子間などでタダ同然で貸している「使用貸借」の場合、賃貸による減額効果はありませんし、小規模宅地等の特例の「貸付事業用宅地等」には、相続開始前3年以内に初めて不動産の賃貸を始める、いわゆる「駆け込み対策」を適用対象外とするルールもあります。
こうした法の落とし穴にはまってしまうことのないよう、早めに専門家に相談することが、不動産の圧縮率を使って相続税対策を成功させるポイントです。

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