不動産投資の主な種類のメリット・デメリットを徹底比較

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

不動産投資と一口にいっても、たくさんの種類があります。そして、同じ不動産投資でも種類によって、経営にかかる手間、利回り傾向、メリット・デメリットが変わります。 そのため、不動産投資を始めるときには「どんな種類があるのか」「その種類がどんな人に向いているのか」をしっかり把握することが大切です。この記事をご自身に合う不動産投資の種類選びのヒントにしてください。

不動産投資にはたくさんの種類がある

まずは、不動産投資の種類の全体像を見てみましょう。不動産投資の主な種類は次の通りです。

  • 区分投資
  • 一棟物件投資
  • 戸建て投資
  • REIT(不動産投資信託)
  • その他(駐車場、民泊、サ高住、太陽光発電など)

これらを比較する段階では、「この種類がやりたい」と決めつけず、なるべくフラットな目線でご自身に合うか否かを判断するのがポイントです。では、それぞれの不動産投資のメリット・デメリットをチェックしていきましょう。

不動産投資の始め方や基礎知識について知りたい方は、まず「不動産投資とは?初心者のための始め方を徹底解説」を御覧ください。

区分投資のメリット・デメリット

区分投資とは、マンションの一室を購入して家賃収入を得る不動産投資の種類です。この区分投資はアパート経営などに比べると、投資金額を抑えやすいので初心者にもチャレンジしやすいのが特徴です。

最近では、ビジネスパーソンの副業として不動産投資が人気を集めますが、その際に選択されるケースが多いのが区分投資です。また、東京都心の高級物件は、資産家の相続税対策に活用されることもあります。

区分投資のメリット

  • 初期投資額を抑えやすい
  • 物件数が多いので好立地物件を見つけやすい
  • 物件管理をアウトソースすると手間がかからない
  • 他の種類と比べると買い手が多いので現金化(売却)しやすい
  • 現金よりも評価額を抑えやすいので相続税対策になる

区分投資のデメリット

  • 投資規模が小さく低利回りなのでまとまったリターンを得にくい
  • 所有する部屋数が少ない場合、空室による経営ダメージが大きい
  • 金融機関の積算評価が低いので経営規模を拡大しづらい

区分投資がおすすめな人

  • (リスクが限定的なため)初めて不動産投資をする人
  • ローリスク、ローリターンを重視する人
  • 大企業や高所得の会社員(高属性だと金融機関の融資審査のハードルが低い傾向があるため)
  • 相続税対策をしたい資産家

一棟物件投資のメリット・デメリット

一棟物件投資とは、建物(アパートやマンション)を丸ごと所有する不動産投資の種類です。新築の一棟物件投資の場合、建物を「所有している土地に建てる」「新規で購入した土地に建てる」という2パターンがあります。後者は土地代がかかる分、低利回りの傾向があります。

中古の一棟物件投資の場合、郊外や地方の物件価格が低めのものから、東京都心の高級マンションまで幅広い選択肢があります。どの一棟物件投資を選択しても、先ほどご紹介した区分投資と比べると規模が大きくなる分、経営の難易度は上がります。

そのため、区分投資や戸建て投資など小規模な不動産投資で経験値を積んでから、一棟物件投資に移行するケースが目立ちます。

一棟物件投資のメリット

  • 規模が大きい分、 経営効率が上がるので高利回りな傾向
  • 複数の部屋を所有しているため、1室あたりの空室ダメージが小さい
  • 建物全体を所有しているため、オーナーの意思を経営に反映させやすい
  • 金融機関の積算評価が高い場合、経営規模を拡大しやすい

一棟物件投資のデメリット

  • 物件の規模が大きい分、初期費用と経営の手間がかかる
  • 区分所有と比較すると市場に出ている数が少ないため、好立地物件を探しづらい
  • 買い手が限られるので現金化(売却)しづらい

一棟物件投資がおすすめな人

  • 一棟物件を建てられる土地を所有している地主
  • 不動産投資の経験値が豊富な人
  • 将来、専業大家を目指す人

関連記事:マンション一棟投資のメリットとリスク対策について

戸建て投資のメリット・デメリット

戸建て投資とはその名の通り、戸建て住宅を購入(または空き家を転用)する不動産投資の種類です。築古物件を購入して再生させたり、相続で受け継いだ戸建て物件を流用したりすることで、他の種類の不動産投資よりも高利回りを得ることも可能です。

新築の戸建て住宅を不動産投資に利用する選択もありますが、低利回りなこと、木造住宅は耐用年数が短いことなどから一般的には不向きと考えられます。

日本では人口減少社会が本格化し、地方だけでなく大都市周辺でも空き家の戸建て住宅が急増しています。このような物件を不動産投資の原資と捉えて再生していくと、大きな可能性が広がります。

戸建て投資のメリット

  • アパートやマンションに比べて高利回りな傾向がある
  • ファミリー層がターゲットのため長期入居が期待できる
  • アパートやマンションに比べると競合物件数が少ない

戸建て投資のデメリット

  • 木造住宅の場合は建物の寿命が短い
  • 区分と比べると床面積が広いため、リフォーム費用がかかりやすい
  • 所有する物件数が少ないと空室ダメージが大きい

戸建て投資がおすすめな人

  • 相続で空き家と土地を受け継いだ人
  • 賃貸住宅のリフォームの知識がある人
  • 購入するキャッシュを持っている人(築古の中古物件は金融機関の融資審査で不利なケースもあるため)

REITのメリット・デメリット

REIT(リート)とは、「不動産投資信託」のことです。ここまでご紹介してきた不動産投資の種類はすべて「現物の不動産」を所有するものでしたが、REITは「金融商品」です。大勢の投資家から集まった資金をもとにREITが不動産を所有・運用し、そこから得られた収益をもとに投資家に配当が還元されます。

また、人気がある銘柄は投資口価格(株式でいうところの株価)が上昇するため、値上がり益も期待できます。

REITのなかでも日本版は「J−REIT(ジェイ・リート)」と呼ばれ、主なジャンルにはオフィス系、ホテル系、住居系、インフラ系、物流系などがあります。同じREITでも、そのジャンルのおかれている環境によって配当や値上がり益が変わってきます。

REITのメリット

  • 証券総合口座があれば、株式と同じように購入可能。手軽に始められる
  • 1万円程度といった少額から投資ができる
  • 利益に対する分配金の割合が高い(利益の90%超を分配すると法人税が非課税になる仕組みのため)
  • 証券総合口座で売却すればすぐに現金化できる
  • 投資信託の売り買いだけの手間で運用できる

REITのデメリット

  • 投資口価格が日々変動する。元本割れリスクもある
  • 運用成績が思わしくないときは、想定していた分配金が得られないこともある
  • REIT を運用する投資法人の破綻リスクがある

※ただし、破綻した場合でも資産価値がゼロになるわけではありません。REITが所有する不動産を売却するなどして資金が保全されます。

REITはこんな人に向いている

  • 投資金額を抑えたい人
  • いろんなジャンルの不動産に分散投資をしたい人
  • 現金化のしやすさ、手軽さを重視する人

関連記事:REIT(不動産投資信託)の仕組みとは?メリット・リスクを解説

その他の不動産投資には何がある?

ここまでご紹介してきた不動産投資以外の種類も数多くあります。その一部をご紹介します。

駐車場のメリット・デメリット

所有している土地を駐車場にする不動産投資の種類です。メリットは建物を建てる必要がない分、初期費用が抑えやすいこと。とくに所有している土地がある場合は、設備やフランチャイズの加盟料などで済みます。デメリットは、アパートやマンションのように固定資産税の軽減税率の対象にならないことです。

民泊のメリット・デメリット

所有するマンション、アパート、戸建てなどを民泊に転用する不動産投資の種類です。メリットは集客がうまくいけば賃貸住宅よりも高利回りが実現しやすいことです。デメリットは、インバウンド需要に左右されやすいこと。新型コロナウイルスのように世界的な感染症や経済危機が発生して、外国人観光客が減ると大打撃を受けやすいです。

サービス付き高齢者住宅のメリット・デメリット

介護事業者に建物や土地を貸す不動産投資の種類です。メリットは、マンションやアパートに向かない駅から離れている立地でも経営しやすいことです。デメリットは、介護事業者が見つからない、または退去してしまえば収益があげられないことです。

太陽光発電のメリット・デメリット

所有する土地に太陽光発電設備をつくり、そこで得られた電気を売電する不動産投資の種類です。メリットは、FIT(固定価格買取制度)によって20年間に渡って売電価格が約束されていることです。デメリットは、台風や地震などで太陽光設備が損壊してしまえば、修理の費用がかかることです。

決定前は専門業者のヒアリング、決定後は専門家選びが大切

ここで見てきたように一口に不動産投資といっても、種類によって経営の難易度やメリット・デメリットはかなり違います。

種類が多いので「迷ってしまう…」という人もいるかもしれません。効率的なセグメント方法としては、気になる不動産投資の種類をいくつか絞り込み、ネットや本などで情報収集。その上で、それぞれの専門会社にヒアリングを重ねていくとよいでしょう。

不動産投資の種類を決定して実際に経営をスタートさせた後は、開業届けや青色申告などの手続きが必須です(ただしREITを除く)。初心者は後々トラブルにならないよう、不動産投資に強い税理士探しも忘れずに行いましょう。

まとめ

最後に、属性別の相性のよい不動産投資をご紹介したいと思います(あくまでも目安です)。

ビジネスパーソンが副業で不動産投資をするときはREITや区分投資が向いています。また、専業の大家を目指すなら一棟投資、地主であればアパート、低層マンション、駐車場などが向いているというのが一般的です。

この種類の選択でミスマッチが起きると「不動産投資をするんじゃなかった!」という結果になりがちです。そのため、種類の選択は慎重に進めてください。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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