土地の売却相場の調べ方とは?価格を左右するポイント・注意点も

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

土地を売却するなら、とりあえず不動産会社に査定をお願いすればよいのでは?とお考えの人もいらっしゃるでしょう。しかし、売却を成功させるには、業者任せではなく、ご自身で土地の相場を調べることが肝心です。

土地の売却相場・価格を調べる方法

一口に「土地の売却相場・価格」といっても次の4つの種類があり、用途と算定額が違います。

  • 時価(実勢価格)
  • 公示価格(地価公示)
  • 相続税評価額(路線価)
  • 固定資産税評価額

つまり、同じ土地でも上記の4つの価格が存在するということです。土地を売りたい場合に知りたい土地の相場・価格は、このうち「時価」ですが、他の種類についても知っておくと便利です。

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時価(実勢価格)で調べる

土地を売却したいときに一番知りたい相場は「時価」でしょう。時価は不動産会社が「この土地を不動産市場に売り出せば、これくらいで売れるだろう」という見込み額です。一般的な不動産会社の査定は、国土交通省の指導によって作成された「価格査定標準化マニュアル」(不動産流通推進センター作成)の内容に沿って行われています。

時価の調べ方は、不動産売買サイトで類似物件を探したり、不動産会社の査定を受けたりといった方法があります。査定額については、不動産会社ごとのスタンスが違うため、各社で提示額が違ってくるのが普通です。相場観をつかむためにも複数の不動産会社の査定を受けるのが賢明です。

公示価格(地価公示)で調べる

土地の売却相場をつかみたいときには、公示価格も参考になります。公示価格とは、国土交通省が算定する標準地の価格のことです。毎年1月1日時点の1平方メートルあたりの価格を不動産鑑定士が判定し、その年の3月に公示されています。公示価格は、公共工事を行う際の土地の取得価額を算定する基準になります。また、土地売買の参考指標としても用いられています。

公示価格の調べ方は、国土交通省の「土地総合情報システム」のトップページから「地価公示 都道府県地価調査」を選択。その後、都道府県→市町村と選択すると、近隣の基準地価が表示されます

相続税評価額(路線価)で調べる

相続税評価額(路線価)は、相続税や贈与税の計算時に用いられます。国税庁が毎年1月1日時点を基準として算定し、その年の7月1日に公表するものです。土地における相続税評価額の評価割合は、公示価格のおおむね80%になります。

相続税評価額の調べ方は、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」のデータを利用して行います。ただ相続税評価額を算出するには、専門知識が必要なため税理士などの専門家に依頼するのがよいでしょう。

固定資産税評価額で調べる

固定資産税評価額は、固定資産税・都市計画税・登録免許税、不動産取得税などを算出するときに用いられる基準です。算定するのは各市区町村などで3年に1回のペースで見直されています。なお、固定資産税評価額は、時価の70%程度が目安となっています。

固定資産税評価額の調べ方は、不動産所有者に対して市区町村から毎年届く固定資産税の納税通知書で確認できます。

土地の相場が決まる基準

土地の売却相場は、住所と広さだけではなく、いくつかの要素が影響して決まります。売却時に、ご自身の土地が有利・不利なのか確認してみましょう。

ポイント1:整形地か不整形地か

土地の形は、売却相場に大きな影響を与えます。上から見たときに正方形または長方形の土地は「整形地」と呼ばれ、売却相場にプラス材料です。理由は、土地が四角だと建物を効率的に建てやすいからです。逆に、いびつな形・三角形・台形などの土地は「不整形地」と呼ばれ、使いにくい分、売却相場にプラス材料です。

ポイント2:接道状況はどうなっているか

建築基準法では、住宅などを建てる土地は道路に2メートル以上接していることを義務付けています。この道路を細長い路地で確保する旗竿地は、類似物件の相場と比較して割安になるのが通例です。

さらに、道路に2メートル以上接していない土地は、売却相場が著しく安くなります。買い手が金融機関で融資を受けようとしても難航するケースが多いため、売却までの期間が長引く可能性もあります。

ポイント3:立地環境はどうなっているか

立地環境で重要なのは最寄り駅までの所要時間です。もちろん、所要時間が少ないほどニーズが高くなります。また徒歩圏内に駅がない場合は、バス停までの時間が重要視されます(マイカー普及率の高い地方は除く)。

立地環境でもう1つ重要なのは日照です。現時点で隣接の建物に日照が遮られていないか、将来的に建物が建ったときに日照が遮られる可能性がないかなどがチェックポイントになります。

ポイント4:近隣施設は何があるか

近隣施設は、売却相場のプラス材料にもマイナス材料にもなります。プラス材料になる例は、土地のすぐ近くに公園・ブランド力のある学校・大型スーパーがあるといった環境です。逆にマイナス材料になる例は、土地のすぐ近くに墓地や嫌悪施設があるといった環境です。

ポイント5:大規模開発の予定はあるか

その土地の近くで大規模開発がはじまっている、あるいは、はじまる予定があるといった場合も売却相場にはプラス材料です。これは、単に開発があるということではありません。その大規模開発によって、周辺地域の価値や人気が高まり、流入人口が急増するといったケースでは売却相場に大きな影響を与える可能性があります。

大規模開発の一例としては、近くに新駅ができる、大型ショッピングセンターがオープンする、最寄り駅周辺が刷新されているなどです。

土地売却の査定を受ける場合の注意点

土地の査定は相場を知るとともに、不動産会社選びの大切な場でもあります。

次の3つの注意点を意識して査定を進めましょう。

複数の不動産会社の査定を受ける

冒頭で触れた通り、土地の相場査定は「価格査定標準化マニュアル」に準じて行われるのが通例です。ただ、複数の不動産会社に査定をお願いすると、査定額に差があるケースもよくあります。

これは、不動産会社によって類似物件の集め方や物件を市場に出すときの考え方が違うからです。このため、土地を少しでも高く売りたいのであれば、複数の不動産会社の査定を受けるのがベターです。

ただし、数多くの査定を受けることに負担を感じる人もいるかもしれません。このような人はまず、ネット上のやりとりで済む簡易査定や一括査定を受けてみましょう。その上で納得できる査定額を提示してきた不動産会社に訪問査定をお願いすると効率的です。

不動産会社には得意なエリア・分野がある

不動産会社にはそれぞれ得意なエリア・分野があります。エリア例では、「関東圏を得意にする」「関西圏に特化している」「都心5区の実績が豊富である」といった具合です。また物件の分野には、マンション、アパート、戸建て、土地などがあります。これら不動産会社のなかから、売却する土地にふさわしいパートナーを選ぶことが大事です。

査定根拠を確認する

土地売却のよくある失敗は「相場よりも高い査定を鵜呑みにしてしまった」というものです。査定はあくまでも「これくらいの価格で売れるだろう」という見込み額でしかありません。大切なことは「査定額に近い価格で土地を売却できること」です。

不動産会社のなかには、媒介契約を取りたいがために相場よりも割高な査定価格を提示してくるところもあります。このような不動産会社と契約してしまうと、買い手が上手く見つからず、最終的に大幅値下げして売却しなくてはならないケースもあります。

こういった土地売却の失敗を防ぐには、その査定額に至った根拠をしっかり確認することです。たとえば、その不動産会社で類似物件を売却した直近の実績がどれくらいあるか、売却額の平均額はどれくらいかなどです。

まとめ

この記事でお話ししてきたように、土地の売却で成功するには、まず売主が不動産価格のこと(時価とは?時価の調べ方は?)を理解することが大切です。その上で、土地の売却相場を左右するポイント(土地の形や接道状況など)や、査定時の注意点(複数査定を受けるなど)を参考にしながら、納得できる不動産会社を見つけましょう。

なお次のステップは、不動産会社に正式に売り出しを依頼するため、媒介契約を締結することになります。この契約が済めば土地が不動産市場に出され、買い手探しがスタートします。ただし、買い手が見つかっても、必ずしも売り出し価格で土地が売却できるわけではありません。価格交渉がある可能性もあるため、予めどれくらいまでなら値引きできるかを不動産会社と決めておくことも大事です。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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