アパート経営の収入はどれくらい?収支の基本から手取り収入例まで

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

アパート経営を考えている方が気になるのは「実際にどれくらいの収入を得られるか」ではないでしょうか。ここではアパート経営の収入についての基本をわかりやすく解説。手取り収入例なども併せてご紹介します。

アパート経営の収入の計算方法は?

アパート経営の収入は、そのすべてが手元に残るわけではありません。全体の収入から支出(経費)や税金などを差し引いた残りが手取り収入になります。

アパート経営の手取り収入=収入−支出(経費・税金)

この計算方法はシンプルです。しかし、収入・支出・税金にはたくさんの種類があり、とくに税金はかなり複雑です。どのような種類があるか、一つひとつチェックしていきましょう。

アパート経営の収入の主な内容とポイント

アパート経営の収入の大半は家賃が占めます。この他にも、共益費(管理費)、駐車場代、礼金、更新料などの収入もあります。それぞれ入ってくるタイミングは次の通りです。

項目 入ってくるタイミング
家賃 毎月
共益費(管理費) 毎月
駐車場代 毎月
※月極契約の場合
礼金 入居時
※最近は0円の物件も
更新料 更新時

アパート経営の収入1:家賃

家賃は、決まった日に毎月入ってくる定期収入です。空室率を下げて家賃がしっかり入ってくる経営環境をいかにしてつくるか。これがアパート経営成功の生命線といえます。空室リスクを回避するには、周辺相場を意識して家賃設定することがポイント。家賃が高過ぎれば空室の原因になります。逆に、家賃が安過ぎれば本来得られる利益を逃してしまいます。

もうひとつ家賃で意識したいのは、築年数とともに下落することです。この下落率を織り込んで経営計画を立てないと大きなズレが生じます。一般的に家賃は、築年数が1年増えるごとに1%ずつ下落するといわれます。

アパート経営の収入2:共益費(管理費)

共益費は、アパートを維持管理することを目的に、家賃と一緒に毎月徴収する収入です。管理費と呼ばれることもあります。家賃と合算したときの金額が相場よりも高ければ空室の原因になりかねません。割高になっていないか定期的にチェックするのが賢明です。管理費の名称を使う場合、物件管理会社に支払う「委託管理費」と混同しやすいので注意しましょう。

アパート経営の収入3:礼金

礼金はアパートなどに入居する際、大家さんに支払われる謝礼金です。敷金と違って入居者に返金されることがないため、収入として扱われます。礼金の相場は地方によって変わってきます。一般的には家賃の1〜2ヶ月分が相場。しかし、競争率の高いエリアでは家賃0円の物件も増えています。長期空室が発生した場合、まず礼金の減額または0円を考えるのがセオリーです。

アパート経営の収入4:駐車場代

アパート敷地内や近隣に駐車場があるときは、家賃とともに駐車場代も入ってきます。管理費と同様、家賃と合算した金額が周辺相場の範囲内になっているかチェックすることがポイントです。

アパート経営の収入5:更新料

更新料は、賃貸借契約の更新のとき、大家さんに支払われるお金です。更新頻度は一般的に2年に1回行われ、更新料相場は家賃の1ヶ月分が通例です。ただし更新をきっかけに退去する入居者もいます。空室対策のために「更新料なし」を打ち出すのも一案です。

アパート経営の収入6:その他

アパートの敷地内に自動販売機や携帯電話の基地局などがある場合、これも大切な定期収入源になります。

アパート経営の支出の主な内容とポイント

アパート経営の支出で毎月かかるのは、管理委託費です。これ以外には、修繕費、損害保険料、仲介手数料、広告料(AD)などもあります。それぞれ支出が発生するタイミングは次の通りです。

項目 タイミング
管理委託費 毎月
修繕費 その都度発生
損害保険料 経営開始時、その後、定期的に契約
仲介手数料 入居者仲介時
広告料(AD) 入居者仲介時

アパート経営の支出1:管理委託費

管理委託費は、アパートの日常清掃やトラブル対応などを請け負ってくれる管理会社に毎月支払います。管理委託費の相場は、一般的に家賃の3〜5%程度といわれます。例えば、居室が10室(家賃7万円)のアパートを経営していて管理委託費5%なら、コストは以下のようになります。

[管理委託費の一例]

  • 1居室あたりの管理委託費/月:7万円×5%= 3,500円
  • アパート全体の管理委託費/月:3,500円×10室=3万5千円
  • 年間にかかる管理委託費:3万5千円×12ヶ月=42万円

ただし、管理委託費の安さだけで管理会社を選ぶのはおすすめできません。なぜなら、管理業務の領域がそれぞれの管理会社で異なるからです。管理メニューが充実しているなら、割高な管理料でもかまわないと考える家主もいらっしゃるでしょう。ちなみに、家主自らアパートの物件管理をするなら、管理委託費はかかりません。ただコストは0円ですがその分、手間はかかります。

アパート経営の支出2:仲介手数料

仲介手数料は、空室発生時に入居者を紹介してくれた仲介会社に支払うものです。オーナー自身が入居者を探した場合、仲介手数料は発生しません。なお、宅建業法において賃貸借の仲介手数料の上限は、家賃の1ヶ月分までと定められています。この1ヶ月分というのは借主(入居者)・貸主(オーナー)の双方から受け取った合計金額です。

アパート経営の支出3:修繕費

修繕費は、その都度発生した小規模な修繕、定期的な大規模な修繕にかかるお金です。外観や共用設備の危険な破損、室内設備の故障などに対応するのはオーナーの義務です。修繕が発生したときに即対応できるよう、十分な現金をストックしておくことが大切です。なお、大規模修繕は10〜15年スパンで行うのが一般的です。

アパート経営の支出4:損害保険料

損害保険料は、アパート経営のさまざまなリスクを回避または低減をするために加入するものです。火災保険はアパートローンを利用する場合、加入が必須になります。火災保険のオプションである地震保険や水害保険は立地環境のリスクに合わせて加入を判断するのがよいでしょう。

アパート経営の支出5:広告料(AD)

広告料は、空室発生時に入居者を紹介してくれた仲介会社に支払うものです。とくに決まった金額設定はありませんが、相場は家賃の1〜3ヶ月程度です。ただし宅建業法では仲介会社が広告料を受け取ることを禁じています(媒体掲載料は受け取れます)。業界の慣例で「広告料」と呼ばれているものは、インセンティブのような意味合いです。広告料は絶対に払わなければならないというものではなく、オーナーの気持ち次第の側面もあります。

アパート経営の支出6:その他

アパート経営に関わる交通費や雑費なども支出に計上できます。ただし、どこまでの範囲を支出に含めるかは議論がわかれるところです。基本的な考え方としては、「それが不動産収入を得るための直接的な支出である」ことです。

一例としては、お世話になっている管理会社や仲介会社にお歳暮を送った場合、支出になると考えてよいでしょう。また、不動産オーナー向けの業界誌や書籍などの購入費用も支出になると考えてよいでしょう。また、インターネット代や携帯代は、アパート経営に使った分だけが按分して経費とできます。

[アパート経営の支出に該当するもの]

  • 不動産管理会社や仲介会社へのお歳暮
  • 不動産賃貸業に係る書籍
  • 賃貸不動産の現地視察の交通費

など

[アパート経営の支出に該当しないもの]

  • 不動産賃貸業に関係しない相手方との飲食費
  • 資格取得費
  • 家族旅行の旅行代

など

※一部の税金も支出計上できますが、次項でくわしく解説します。

アパート経営にかかる税金とは?

アパート経営の正確な収支をつかむためには、「どんな税金がかかるのか」を理解することもポイントです。大別すると、「アパート経営始めるときにかかる税金」と「アパート経営中にかかる税金」にわけられます。それぞれの内容を紹介します。

アパート経営を始めるときにかかる税金

不動産取得税

不動産を取得したとき(贈与や交換を含む)、都道府県が課税する地方税です。下記の計算式で算出されます。

(不動産取得税の公式)
固定資産税評価額×標準税率4%

ただし、アパートを含む土地及び住宅には、特例の軽減税率が適用されます。

(不動産取得税の特例)
土地及び住宅:標準税率3% ※2024年3月31日まで
住宅以外の家屋:標準税率4%

併せて、アパート用地を含む宅地には、1/2特例も適用されます。

(不動産取得税の1/2特例)
土地の固定資産税評価額×1/2  ※2024年3月31日まで

登録免許税

登録免許税は、土地や建物を登記したときにかかる税金です。アパート経営においては、新築または中古アパートを取得した場合、初期費用にローンを利用した場合などで課税されます。

不動産の売買の登録免許税一覧

用途 名称 税額の計算法
土地の取得 所有権移転登記 固定資産税評価額×2.0%
新築建物の取得 所有権保存登記 法務局認定価格×0.4%
中古建物の取得 所有権移転登記 固定資産税評価額×2.0%
ローンの利用
(金融機関の抵当設定)
抵当権設定登記 債権金額×0.4%

※実際には軽減税率もあります。

印紙税

印紙税は、印紙税法で定められた経済取引に関わる文書に課税されます 。契約金額が多いほど印紙税の税額も増えます。原則、印紙税分の収入印紙を購入し、それを文書に貼り付け、消印をすれば納税したとみなされます。アパート経営で印紙税の必要な文書は、新築アパートを建築するときの「工事請負契約書」、中古アパートを取得したときの「売買契約書」、金融機関と交わす「ローン契約書」などです。

アパート経営中にかかる税金

アパートを“所有”していることで課税される税金が「固定資産税・都市計画税」です。これは収支が黒字・赤字に関係なく発生します。一方、アパートを“経営”していることで発生するのが「所得税・住民税」です。こちらは収支が黒字の場合のみ課税されます。

固定資産税 or 都市計画税

固定資産税は、土地や建物などを所有している人に対し、市町村が課税する地方税。毎年1月1日時点でその土地や建物などを所有している人に課税されます。固定資産税は、固定資産税評価額の1.4%で計算するのが原則です。
※実際には、軽減や減免もあります。

上記とともに土地や建物に課税される税金には、都市計画税もあります。これは原則、市街化区域内の土地や建物に課税されるものです。税率は0.3%以下の範囲で、それぞれの市町村で設定することができます。

所得税 or 住民税

アパート経営にかかる所得税も、他の所得と同様、所得が高くなるほど税率が上がっていきます(累進課税)。併せて、所得に応じた住民税も納めることになります。

注意したいのは、アパート経営の所得は、収入から支出(経費)を差し引いた額ということです。そして、この不動産所得は他の所得(会社員の所得や他事業の所得)と合算して計算するルールもあります。そのため、同じ給与所得(課税所得)1,000万円の人でも、不動産所得によって所得税の税率(課税所得に適用される税率のうちの最高税率)は変わってきます。

[不動産所得+給与所得の例:黒字の場合]
不動産所得500万円+給与収入1,000万円=所得金額1,500万円
→所得税の税率は最高で33%を適応
[不動産所得+給与所得の例:赤字の場合]
不動産所得マイナス500万円+給与収入1000万円=所得金額500万円
→所得税の税率は最高で20%を適応

※不動産所得の赤字分の損失を他の所得から差し引く仕組みを「損益通算」と言います。

アパート経営の手取り収入例:大手アパートメーカーの場合

アパート経営の手取り収入はケースバイケースです。一例では、中古アパートであれば取得価格が安い分、短期的なキャッシュフローは高くなりやすいですが、修繕費がかさむため長期的には低下する可能性もあります。また新築アパートでも土地ありかなしか、好立地か郊外かなどでキャッシュフローは大きく変わってきます。

これを前提に、ここでは、某大手アパートブランド「へーベルメゾン」が紹介している収支計画をもとに手取り収入例を見てみましょう。

アパート経営1年目の収支例

月の収入 トータル93万8,083円
(内訳)
家賃 86万8,000円
礼金 7万83円
月の支出 トータル49万6,008円
(内訳)
建物保有税 2万8,131円
土地保有税 2万2,969円
共用の電気代や水道代など 5,000円
管理手数料 4万3,400円
修繕積立金 2万5,000円
建物管理費 2万370円
ローン返済額 35万1,138円
月の手取り収入 44万2,075円
年間手取り収入 530万4,900円す

ちなみに、この収支計画に沿って5年間アパート経営をした場合、2年目以降の収支の変動も考慮すると、手取り収入の累計は、約2,326万円となっています。これを20年間続けると累計9,300万円になりますが、築年数が増えると空室率が高まったり、家賃が下落したりといった可能性が高いです。これらを加味して、当初の想定よりも少ない手取り収入となってしまいます。

※上記の表は、減価償却費などを反映した確定申告上の収支ではありません。また、所得税や住民税なども考慮されておりません。あくまでもキャッシュフローの参考です。

まとめ

この記事では、アパート経営の収入の基本的な考え方をテーマに解説してきました。アパート経営の手取り収入は「収入−支出(経費・税金)」であること。そして、収入・支出・税金には、実に多くの項目があることがご理解いただけたと思います。

このなかで一番複雑なのは、税金です。ここでお話したことはアパート経営の税金のごく一部。その内容を細かく解説すれば、本1冊分以上でも足りません。これをオーナーご自身で適切に理解して実践していくのは大変です。

最近は、不動産オーナーに対する課税が強化がされています。特に相続対策でアパート経営を始めるなら“不動産と相続に強い税理士”というビジネスパートナーが必須です。もし、これから税理士を探されるのであれば、まずはこの分野で実績豊富な税理士に相談してみましょう。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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