アパート投資とは?マンション投資との違いを徹底解説

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

アパート投資(経営)は、不動産投資のなかでもとくに人気のあるジャンルです。この記事では「なぜアパート投資が支持されるのか」をマンション投資と比較することで浮き彫りにしていきます。ご一読いただければ、アパート投資の目的やメリットをしっかりご理解いただけます。

アパート投資とは?その目的は?

不動産投資にはいくつかのジャンルがあります。そのうちの1つがアパート投資(経営)です。

アパート投資とは?

はじめに、アパート投資の人気ぶりを確認しましょう。某不動産会社の不動産投資サイトが会員を対象に実施したアンケートによると「保有している投資用不動産」ではアパート投資(一棟アパート)の割合が1位。不動産投資家の4割以上がアパートを所有しています。

  • 一棟アパート:41.1%
  • ワンルーム区分マンション:33.9%
  • ファミリー向けマンション:24.6%
  • 一棟マンション:24.6%
  • 戸建:23%

ノムコム・プロ「第12回 不動産投資に関する意識調査」(2020年6月調査)

以前はアパート投資といえば、地主さんが所有地に建物を建てるスタイルが主流でした。これに加えて最近では、高所得のビジネスパーソンや士業の人など幅広い層にも広がっています。

関連記事:アパート経営とは?知っておきたい基礎知識を税理士が解説

アパート投資を行う主な目的は?

ジャンルを問わない「不動産投資の共通の目的」としては、次の内容が挙げられます。

  • 副業をするため(キャッシュフローを得るため)
  • 生命保険代わりにするため(団体信用生命保険)
  • 将来の私的年金を確保するため

 など

さらに、アパート投資は「相続税を節税するため」という目的で、富裕層や高所得者層に選ばれるケースも目立ちます。

アパート投資とマンション投資との違い

冒頭のアンケートで見たように、不動産投資で人気が高いジャンルの1位はアパート投資、2位はマンション投資(ワンルーム区分マンション)でした。それだけに「どちらを選択するか迷う」という初心者も多いのではないでしょうか。両者の違いを「初期投資」「立地」「賃料」の3つのテーマで比較してみます。

初期投資の違い

初期投資は、マンション投資よりもアパート投資の方が多くかかります。そのため、「初期投資を抑えたい人」はワンルーム区分マンション投資、「経営規模を追求したい人」はアパート投資が向いているでしょう。

具体的にアパートとマンションでは、どれくらい初期投資が違うのでしょうか。不動産経済研究所の調査によると、首都圏の投資用マンションの平均価格は3,172万円(2020年上期)。ワンルームマンションであれば、2,500万円以下の新築物件も珍しくありません。

これに対して、アパートの初期投資の額は広さ・間取り・住宅設備などでケースバイケースです。一例として木造の場合の坪単価は70〜90万円程度(付帯工事含む)といわれます。仮に坪単価80万円で延床面積100坪(1階・2階各50坪)なら建物の建築価格は8,000万円程度が目安になるでしょう。

立地の違い

アパートとマンションの立地の違いを比べてみると傾向はかなり違います。とくに東京23区は「マンション=駅近中心」「アパート=駅からやや離れた場所」という違いが鮮明です。たとえば某不動産情報サイトで東京23区・駅徒歩5分圏内の条件でマンションとアパートを検索してみると、アパートの方が約5倍以上も件数があります。

  • 賃貸マンション(駅徒歩5分圏内)約9万物件
  • 賃貸アパート(駅徒歩5分圏内)約1万7,000物件

賃料の違い

アパートとマンションの賃料を比べると、(立地や間取りが近い条件であれば)マンションの方が多く得られるのが一般的です。一例としては「豊島区池袋の新築ワンルーム」で検索をしてみると、アパートの賃料8.6万円に対してマンションの賃料は11.6万円。3万円の家賃差があります。

このようにアパートとマンションでは家賃相場が違うため、入居者の傾向も異なります。たとえばワンルームの場合、マンションはビジネスパーソンなどが中心なのに対してアパートは学生などが目立ちます。

アパート投資の5大メリットとは

ここまでの内容でアパート投資とマンション投資の違いについてはご理解いただけたと思います。次に両者を比較したときのアパート投資のメリットをご紹介します。

メリット1:高利回りで運用しやすい

マンション投資の方が1室から得られる賃料は多いですが、運用利回りになるとアパートの方が高利回りになります。某不動産投資サイトに掲載されている区分マンション投資とアパート投資の表面利回りを比較すると、以下のように平均約1.5%の差になります。

  • 区分マンション:5%台前半
  • 売りアパート:6%台後半

アパートの利回りが有利な理由は、初期費用が抑えやすいこと、部屋数がたくさんあること(賃料収入が多いこと)が主な理由です。

メリット2:キャッシュフローを出しやすい

アパート投資は高利回りで運用しやすい分、キャッシュフローを出しやすいです。新築物件で比較した場合、区分マンション投資は「家賃収入−ローン返済など」が赤字になることもありますが、アパート投資であれば比較的手残りを確保しやすいです。

メリット3:空室リスクを軽減しやすい

区分マンションと比較すると、アパート投資の方が所有する部屋数が多い分、「空室リスクを軽減しやすい」という考え方が一般的です。もし、区分マンションを1室所有していて退去が発生すると空室率は100%になります。これが部屋数10室のアパートであれば、1室退去が発生しても空室率は10%でしかありません。

メリット4:広い土地を資産として残しやすい

区分マンションでは限られた敷地を数多くのオーナーが共有で所有しているため、1人あたりが所有する面積はごくわずかです。アパート投資であれば、1人(または少人数)のオーナーが広い敷地を所有するのが普通です。
※ただし、定期借地権を利用してアパートを所有する場合、このメリットは当てはまりません。

メリット5:運用・管理を思い通りにできる

アパート投資は建物1棟を所有するため、物件の運用方針や共用部の管理体制をオーナーの意志で自由に変えられます。たとえば「ペット可物件」に変更したいとき、区分マンション投資であれば他のオーナーのコンセンサスを得なければなりません。これがアパート投資ならオーナーの意思で自由に変えられます。

相続税対策が目的なら税理士への相談を

上記の他、アパート投資には「相続税対策をしやすい」メリットもあります。不動産・相続に特化した税理士として、この部分について補足したいと思います。

アパート投資が相続税対策になる理由としては、「資産は現金よりも不動産で持った方が相続税評価額を抑えやすいこと」が挙げられます(相続税評価額の目安:土地は市場価格の80%程度、建物は建築費の60〜70%程度)。加えて、「小規模宅地等の特例」や「貸家・貸家建付地」などによる評価額の減額もあります。

これらの節税効果は区分マンション投資でも得られますが、物件価格が高いアパート投資の方がより大きな相続税対策の効果が見込めます。この点が富裕層や高所得者層にアパート投資が人気の理由でしょう。

いずれにしても、相続税対策としてアパート投資を始めたいのであれば、まずは不動産分野に強い税理士に相談することをおすすめします。「アパート投資による相続税対策が本当に必要か」「どれくらいの相続税が節税できるのか」などについて、専門家の意見を聞いた上で実行に移すのが賢明です。

関連記事:不動産投資とは?初心者のための始め方を徹底解説

まとめ

本文で触れたようにアパート投資の主なメリットは「高利回りで運用できること」「キャッシュフローを出しやすいこと」「空室リスクを軽減しやすいこと」などでした。

ただし、これらのメリットを享受するためには「入居者ニーズのある立地にアパートを所有すること」という絶対条件があります。人口減少エリアや過当競争エリアにアパートを所有しても空室だらけになりやすく、高利回りも十分なキャッシュフローも実現できません。

そう考えるとアパート投資を成功させるためには、入居者ニーズをしっかりリサーチして立地を選定することが極めて重要です。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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