土地活用の目的と種類とは?メリット・デメリットや選び方のポイントを専門家が解説

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

土地活用のなかでも、その土地を運用して利益を得る「自己活用」の種類とそれぞれのメリット・デメリットを解説します。土地の自己活用には数多くの選択肢がありますが、不動産と相続税を得意にする税理士が厳選した7種類に絞ってご紹介します。

土地活用の目的と種類とは?

土地活用とは?

はじめに、土地の活用方法の目的とその内容について整理します。一口に「土地を活用する」といっても、次の4つの目的があります。

土地活用の種類

  1. 売却
  2. 自宅
  3. 自己活用
  4. 共同活用

上記の4つの目的のうち、「3.自己活用」が本稿でフォーカスするテーマです。

ただし、すべての土地が自己活用に向いているわけではありません。土地の活用を考えるときは、4つの目的から適切なものを選ぶのが重要です。この目的設定を見誤ってしまえば、求めていたリターンを得られない結果になる可能性があります。土地活用の4つの目的、それぞれの内容、向いている土地をまとめると以下の表のようになります。

土地活用の目的 内容 向いている土地の例
1.売却 土地を売却して利益を得る 活用の手段が思いつかない土地
2.自宅 土地にマイホームを建てる 通勤や通学に便利、利便性の高い土地
3.自己活用 土地を活用して利益を得る 駅近、大学や工場の近く
4.共同活用 専門家に土地を運用してもらう 同上

それぞれの内容をくわしく見ていきましょう。

土地活用の目的 ❰ 1.「売却」❱

売却するのに向いているケースは「活用の手段が思いつかない土地」「活用するのが面倒な土地」などです。こういった土地は所有していても固定資産税がかかるだけですので、売却して現金化するのがよいでしょう。

売却を選ぶメリット

売却を選んだときのメリットとしては、固定資産税の負担がなくなることに加えて「現金収入が得られる」「将来の値下がりリスクがなくなる」などが挙げられます。

売却を選ぶデメリット・注意点

立地が悪い土地の場合、購入希望者が少ないため買い手がすぐに見つからないことも多いです。その結果、「想定していた価格で土地を売却できない」ということも考えられます。こういったリスクを回避するには「期間をかけて購入希望者を探す」「営業力のある不動産会社に依頼する」などが有効です。

関連記事:不動産売却とは?知っておきたい基礎知識【完全版】

土地活用の目的 ❰ 2.「自宅」❱

マイホームを建てる予定がある人は、遊休地などを自宅建築に利用する手もあります。

自宅にするメリット

メリットとしては、土地の購入費用がかからない分、「マイホームの総額を抑えやすいこと」が挙げられます。

自宅にするデメリット・注意点

その土地にこだわりすぎないこと」です。所有地がご家族にとって不便な立地である、あるいは、マイホームを建てるには手狭な土地であるなどの不都合があれば、いったん売却処分してその資金を元手に新たな土地を購入する手もあります。

土地活用の目的 ❰ 3.「自己活用」❱

土地の自己活用とは「その土地を運用して家賃や地代などの利益を得ること」です。代表的な自己活用の種類は、アパートやマンションなどの賃貸経営です。さらに、そのほかの選択肢として、駐車場やコンビニの経営などがあります。

自己活用のメリット

自己活用のメリットは、なんといっても所有する資産を利用して「利益を得られること」です。しかもニーズと合致すれば、一時的ではなく「継続的なリターンを得られる」のも魅力です。

自己活用のデメリット・注意点

「初期費用がかかること」や「空室リスクがあること」です。ただし、コストやリスクについては、どの種類を選ぶかで大きく変わってきます。

※自己活用の主な種類と特徴、メリット・デメリットなどについては、後ほどくわしくお話します。

関連記事:不動産投資とは?初心者のための始め方を徹底解説

土地活用の目的 ❰ 4.「共同活用」❱

共同活用とは「土地の運用を不動産の専門家に委託すること」です。

共同活用のメリット

土地を有効活用するために必要な初期費用は委託先が負担してくれます(または、一部オーナー負担)。初期費用を回収できないリスクを避けたい人は、共同活用を選んだほうがよいでしょう。

共同活用のデメリット・注意点

リスクが軽減できる分、自己活用したときよりも運用益が少なくなることです。なお、共同活用には大きく次の2つの種類があります。

  • 土地信託
  • 所有する土地の運用を信託銀行などのパートナーに委託。事業で得た利益から諸経費を引いた「運用益(信託受益権)」を得る方法です。

  • 等価交換
  • 所有する土地をパートナーに提供(出資)。その土地を運用して得た運用益を出資割合に応じて受け取る方法です。

    関連記事:不動産の等価交換とは?メリットやデメリットをわかりやすく解説

    土地の自己活用方法7選とメリット・デメリット

    次に、土地の自己活用方法7種類、それぞれの種類に向いている土地やメリット・デメリットについてくわしく解説します。

    土地を「自己活用」する場合、主な選択肢とメリット・デメリット、向いている土地は次の内容になります。

    種類 向いている土地 メリット デメリット
    アパート賃貸経営
    • 土地面積の目安:30坪〜
    • 最寄り駅から徒歩10分圏内の立地
    • 駅から遠い場所なら学校や大規模工場近く
    • 長期的な家賃収入を得られる
    • 相続税が節税できる
    • 空室リスクがある
    • 建物老朽化リスクがある
    マンション賃貸経営
    • 土地面積の目安:50坪〜
    • 最寄り駅から徒歩10分圏内の立地
    • 商業施設近くなど生活の利便性の高い場所
    • 長期的な家賃収入を得られる
    • 相続税が節税できる
    • 空室リスクがある
    • 初期投資が大きい
    戸建賃貸経営
    • 土地面積の目安:30坪〜
    • ファミリーの賃貸ニーズがある立地
    • スーパーや小学校などから近い場所
    • 競合物件が少なく客付けしやすい
    • 高利回りを期待できる
    • 効率活用ではアパートに劣る
    • 空室ダメージが大きい
    月極駐車場経営
    • 土地面積の目安: 8坪〜
    • 幅広い立地が考えられる
    • 住宅地、オフィス街、商業地や駅近でも可
    • 初期投資がほとんどいらない
    • 管理の手間がかからない
    • 面積あたりの収益が少ない
    • 契約者を探す手間がかかる
    コインパーキング経営
    • 土地面積の目安:10坪〜
    • 都心部や商業地の立地
    • 一定の交通量が見込める場所
    • 月極駐車場よりも高い利益が期待できる
    • 一括借上で安定収益が見込める
    • 競合が増えると収益力低下の恐れ
    • 税金の優遇措置が少ない
    コンビニ経営
    • 土地面積の目安:40坪〜
    • 駅前、住宅地、行楽地など幅広い立地
    • 一定の人流が見込める場所
    • 本部のノウハウで経営できる
    • ブランド力を利用できる
    • 長期契約の縛りがある
    • 本部の方針の縛りがある
    賃貸併用住宅
    • 土地面積の目安:30坪〜
    • 最寄り駅から徒歩10分圏内の立地
    • 駅から遠い立地なら学校や大規模工場近く
    • 相続税が節税できる
    • 家賃で住宅ローンを軽減できる
    • 建築費用がかさむ
    • 賃貸人がいるストレスがある

    今回これら7種類を厳選した理由は比較的、幅広い土地で使える自己活用方法だからです。
    それぞれの方法のメリット・デメリット、向いている立地・敷地をくわしく見ていきましょう。

    1.アパート賃貸経営

    アパート賃貸経営のメリット

    「長期的な家賃収入を得られる」「相続税対策になる」「(団体信用生命保険の加入により)生命保険代わりになる」などがあります。アパート賃貸経営が相続税対策になる理由は、財産を現金や預金で所有しているよりも相続税評価額を抑えやすいからです。

    アパート賃貸経営のデメリット

    デメリットとしては長期空室が数多く発生した場合、建築費用を回収できなかったりローン返済を手持ちのお金でしなければならなかったりします。

    アパート賃貸経営に向いている立地・敷地

    部屋数の少ないアパート賃貸経営なら、30坪程度などコンパクトな敷地でもアパート建築は可能です。アパート建築にかかる費用は50坪(木造)の場合、5,000〜7,000万円程度が相場でしょう。

    立地条件は、大都市圏内であれば最寄り駅から徒歩10分圏内が基本でしょう。それ以上駅から離れた立地なら、大学キャンパスや大規模工場近くなど、ある程度の人流が見込めないと空室リスクが高まります。

    2.マンション賃貸経営

    マンション賃貸経営のメリット

    アパート賃貸経営の内容とほぼ共通です。

    マンション賃貸経営のデメリット

    デメリットとしては建物が大規模な分、建築費がかさむため長期空室が数多く発生したときのダメージが大きいです。

    マンション賃貸経営に向いている立地・敷地

    高層階の建物を建てるマンション賃貸経営は、アパートよりも広い敷地面積が必要です。鉄筋コンクリート造や鉄骨造などが基本で、3〜5階建程度の低層階マンションでも1億円〜数億円になるのが普通です。

    マンションはアパートよりも家賃が割高になることが多い分、より利便性の高い立地条件が求められます。大都市であれば、人気路線駅や複数路線が使える駅至近が必須条件です。

    関連記事:マンション投資のメリット・デメリットとは?失敗を避ける対策について解説

    3.戸建賃貸経営

    戸建賃貸経営のメリット

    アパートやマンションなどの集合賃貸住宅よりも物件数が少ないことです(ただし、エリアによる)。とくにファミリーの賃貸ニーズのある立地なら、入居者を見つけやすく空室リスクが低いといえるでしょう。

    戸建賃貸経営のデメリット

    デメリットは、土地を効率的に活用する観点でいうとアパートやマンションに劣ることです。

    戸建賃貸経営に向いている立地・敷地

    戸建賃貸経営は、一般の戸建住宅が建てられる土地があれば可能です。手狭な敷地の場合、駐車場なしでも始められますが、車社会の地方であれば大きなマイナス材料になります。

    戸建賃貸経営の場合、想定する入居者はファミリーが基本になります。この層が魅力を感じる、保育園・幼稚園・小学校・スーパー・その他公共施設などが近くにある立地が向いています。

    関連記事:戸建賃貸経営は儲かる?メリット・デメリットと成功させるポイントについて

    4.月極駐車場経営

    月極駐車場経営のメリット

    月極駐車場経営のメリットは、ほかの自己活用方法よりも初期費用が少なくて済むことです。敷地をアスファルトや砂利敷きにする、ライン引くなどの準備で始められます。管理の手間もほとんどかからないのも魅力です。

    月極駐車場経営のデメリット

    デメリットは、ほかの自己活用方法と比べたとき、面積あたりの収益が少ないことです。

    月極駐車場経営に向いている立地・敷地

    月極駐車場経営は賃貸経営と違い、車が2台駐車できるスペース(8坪程度)など手狭な土地があれば始められます。オフィス街・商業地・駅近などさまざまな立地で月極駐車場のニーズがあります。

    5.コインパーキング経営

    コインパーキング経営のメリット

    コインパーキングは、数時間〜1日単位の駐車場ニーズがある立地なら、月極駐車場よりも効率的に利益が得られることです。月極駐車場よりも初期費用がかかりますが、一括借上方式の契約を選べば運営会社が負担してくれます。

    コインパーキング経営のデメリット

    デメリットは、周辺に競合が増えると収益力が悪化する点です。

    コインパーキング経営に向いている立地・敷地

    コインパーキング経営は精算機を置くスペースが必須になるため、月極駐車場よりもやや広いスペースが必要になります。たとえば「車2台の駐車場+精算機」の場合、10坪程度が必要でしょう。

    関連記事:コインパーキング経営とは?利回りやメリット・デメリットについて

    6.コンビニ経営

    コンビニ経営のメリット

    コンビニ経営は、建物や土地を貸す賃貸経営とまったく違う小売業のビジネスモデルです。本部のノウハウやブランド力をうまく使って繁盛店になれば、賃貸経営以上の利益が期待できます。

    コンビニ経営のデメリット

    デメリットは、長期契約や本部の方針の縛りがあること、競合増加による収益力低下などがあります。

    コンビニ経営に向いている立地・敷地

    コンビニ経営は、店舗のほかに駐車場のスペースも必要です。大手コンビニの場合、有効面積50坪以上(店舗間口6メートル以上)が敷地条件になっています。

    コンビニ向けの立地は、駅前、住宅地、行楽地など幅広い立地が考えられます。いずれも人通りや車の通行量が多い路面に面した立地が必須条件になります。

    7.賃貸併用住宅

    賃貸併用住宅のメリット

    賃貸併用住宅のメリットは、アパート賃貸経営とほぼ共通です。アパート賃貸経営にないメリットとしては、低金利のマイホームローンを利用して賃貸住宅が建てられることが挙げられます。

    賃貸併用住宅のデメリット

    デメリットとしては、一般的なマイホームを建てるときよりも建築費用がかさむことです。

    賃貸併用住宅に向いている立地・敷地

    賃貸併用住宅は、自宅とアパートを組み合わせた建物をつくることになります。そのため、立地条件はアパート賃貸経営と共通です。最寄り駅から徒歩10分圏内、それ以上かかるなら、ある程度の人流が見込める場所でないと空室リスクが高まります。

    関連記事:賃貸併用物件とは?収益モデルやメリット・デメリットを解説

    そのほかの土地の自己活用方法

    ここまでご紹介してきた土地の自己活用方法は代表的なものです。このほか、次のような選択肢もあります。

    • トランクルーム
    • コインランドリー
    • 太陽光発電
    • ロードサイト店舗サービス
    • 保育園
    • 医療施設
    • 福祉施設
    •  など

    これらを今回の「土地の自己活用方法」に選ばなかった理由は、経営を成功するのにノウハウ習得が必須だったり、立地条件が限定されたりするからです。

    土地の自己活用方法を選ぶポイント

    ここまでの内容で「土地活用の目的には4種類」あること、その目的の1つである「自己活用にはさまざまな種類があること」はご理解いただけたはずです。しかし、それでも「所有している土地をどのように自己活用してよいか判断できない……」というケースもあるのではないでしょうか。そんなときは以下の表にあてはめて考えると、「どの自己活用方法を選べばよいか」が判断しやすくなります。

    重視すること 自己活用の種類
    高収益を実現したい
    • コインパーキング
    • コンビニ経営
    安定収入を確保したい
    • アパート賃貸経営
    • マンション賃貸経営
    • 戸建賃貸経営
    • 月極駐車場
    相続税対策を実現したい
    • アパート賃貸経営
    • マンション賃貸経営
    • 戸建賃貸経営
    • 月極駐車場
    • 賃貸併用住宅
    初期費用を抑えたい
    • 月極駐車場
    • コインパーキング

    立地・敷地の条件に基づいて、自己活用方法を検討する手もあります。

    立地・敷地の条件 自己活用の種類
    好立地で広い
    • コンビニ経営
    • アパート賃貸経営
    • マンション賃貸経営
    • 賃貸併用住宅
    好立地だが狭い
    • 戸建賃貸経営
    • 月極駐車場
    • コインパーキング
    駅から遠くて広い コンビニ経営
    駅から遠くて狭い 自己活用に不向き

    まとめ

    ここで解説してきた内容を振り返ってみましょう。まず、土地活用には次の4種類がありました。

    1. 売却
    2. 自宅
    3. 自己活用
    4. 共同活用

    上記のうち、自己活用は「所有する土地を運用して家賃や地代などの利益を得る方法」です。土地の自己活用方法には次の7種類があります。

    1. アパート賃貸経営
    2. マンション賃貸経営
    3. 戸建賃貸経営
    4. 月極駐車場経営
    5. コインパーキング経営
    6. コンビニ経営
    7. 賃貸併用住宅

    ※ただし、上記は今回厳選したもの。ほかにも土地の自己活用方法はあります。

    土地の自己活用方法は、それぞれ立地・敷地の条件やメリット・デメリットが違います。その内容を把握したうえで適切な自己活用方法を選ぶことが大切です。

    土地の自己活用は選択を間違えてしまえば、初期費用を取り戻せないどころか、さらに損失が膨らむケースもあります。また、立地・敷地の条件によっては売却を選んだほうがよいケースもあります。間違えた選択をしないためには、信頼できる不動産会社やこの分野に強い税理士のアドバイスを受けながら、慎重に判断することをおすすめします。

    監修者情報

    税理士

    藤井 幹久

    Fujii Mikihisa

    マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

    相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

    税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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