満室経営も可能?アパート経営(賃貸経営)の効果的な空室対策7選!

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

空室対策をしなければならないが、何から手をつけてよいかわからない—。こんな悩みを持つアパート経営者は多いようです。この悩みの根本的な原因は、「どんな空室対策があるか整理できていないこと」、加えて「空室対策の基本的な考え方を知らないこと」の2つです。本記事を読むことでこの根本原因が解消でき、状況に合った空室対策を選びやすくなるはずです。

アパート経営(賃貸経営)の空室対策の重要性

はじめに、アパート経営(賃貸経営)において「空室対策がなぜ重要なのか」を整理したいと思います。

空室対策とは?負のスパイラルとは?

空室対策とは、アパートやマンションなどの賃貸物件が空室になった際(あるいは空室が増える前に)、入居者が決まりやすくなるよう対策を講じることをいいます。

アパート経営でこの空室対策を怠ってしまうと、「空室期間が長くなる」「空室割合が高くなる」といった状況に追い込まれやすいです。その結果、次のような負のスパイラルに陥ってしまいます。

  1. 利益が減る、赤字になる
  2. 手元資金が枯渇する
  3. 設備投資やメンテナンスができなくなる
  4. ますます空室が増えて赤字が膨らむ

空室対策で大切なことは、この負のスパイラルに入る前段階で早めに対策を打つことです。

アパートが空室になってしまう原因とは?

ただ「空室対策を早めに!」と言われても、何から始めればよいかわからないオーナーも多いのではないでしょうか。アパートの空室対策ではじめに着手すべきことは、空室の原因を明確にすることです。原因が分からなければ対策の打ちようがありません。

アパートが空室になる原因は数多くあります。主な原因は次の通りです。

  • 騒音などのトラブルが発生している
  • 入居者ニーズに対応出来ていない
  • 周囲に同じような物件がたくさんある
  • 築古になるなど物件の魅力が低下している
  • 管理(サービス)の質が悪い
  • 家賃設定が割高である など

アパートの空室対策を行う上で押さえておくべきポイント

やみくもに空室対策を行っても、手間とコストがかかるばかりで効果は上がりません。空室対策をはじめる前に押さえておくべきポイントがあります。

ポイント:空室の原因を明らかにする

さきほどお話したように、空室にはさまざまな原因があります。まずは、この原因を明らかにすることが先決です。原因がわからないまま、アパートの空室対策をやみくもに進めても思ったような成果は上がりません。

とはいえ、空室の原因を突き止めるのは意外に難しいものです。次の項目でご紹介するような方法で、原因を突き止めましょう。

ポイント:思い込みで空室対策をやらない

空室の原因を突き止めるには、 所有するアパートが入居者のニーズに対応しているか、市場での競争力があるかなどを客観的に分析する必要があります。具体的な分析方法としては、賃貸物件サイトを利用して、条件(立地・築年数・間取りなど)が似たアパートと家賃設定・初期費用・住宅設備などを比較してみるとよいでしょう。

合わせて、集客を担当している不動産仲介会社に「何が原因で入居者が決まらないのか」「どこを改善すれば入居者が決まりやすくなるか」などをヒアリングすることも参考になります。

満室経営も可能?賃貸経営の空室対策7選

次に本記事のメインテーマである賃貸経営(アパート経営)の7つの空室対策をご紹介します。それぞれ難易度やコストの有無などが違います。

空室対策 難易度 コストの有無
収支への影響
1.初期費用を減らす 低い 収支へ一時的に影響
2.入居審査の条件を緩める 低い 家賃滞納リスクが
高まる可能性も
3.住宅設備を導入する 低い それなりにかかる
4.家賃を下げる やること
自体は
簡単ですが…
収支へ長期的に影響
5.集客方法を変える 中くらい ない(※1)
6.業者を変える 中くらい ない(※2)
7.リフォームをする 高い 多額のコストが発生

※1:貸情報サイトへの出稿や広告費の支払いでコストが発生することもあります。
※2:委託管理費の増額などで収支への影響があるケースもあります。

空室対策1:初期費用を減らす

現状でアパートの敷金・礼金を取っているならゼロにする、さらにプラスアルファとしてフリーレント(家賃無料期間の設定)にするなどの空室対策です。空室対策のなかで、もっとも難易度が低く経営への影響も限定的な空室対策です。

空室対策2:入居審査の条件を緩める

収入、勤務先(職種)、外国人可、ペット可など入居審査の条件を緩める空室対策です。不動産仲介会社と連携すればすぐに実行できますし、コストもかかりません。一方、審査要件を緩めることで入居者の質が低下し、家賃滞納リスクが高まる心配もあります。

空室対策3:住宅設備を導入する

入居者のニーズにあった住宅設備を導入する空室対策です。人気の住宅設備ランキングなどネット上の情報を参考にすれば、入居者ニーズにあったアイテムを選ぶことは容易にできます。ただし収支を考えると、あくまでも家賃に見合う住宅設備を導入することが大事です。

空室対策4:集客方法を変える

賃貸情報サイトへ出稿する(コストあり)、新たな仲介会社を開拓する(コストなし)など、今までと違う集客方法を行うものです。このほか、入居者が決まったときに不動産仲介会社に支払う報酬である広告費(通称AD)を増やす手もあります。

空室対策5:家賃を下げる

文字通り、現在の家賃を下げる空室対策です。相場よりも家賃を下げるほど集客がしやすくなります。難易度は低いですが、経営(長期の収支)へ多大な影響があるため、慎重に行うべき空室対策です。

空室対策6:業者を変える

入居希望者を集客する不動産仲介会社、物件管理を担当する管理会社などを変更する空室対策です。空室の原因が集客や物件管理にあるときには効果を発揮します。その反面、パートナーを変更することで状況が悪化することもあります。

空室対策7:リフォームをする

アパートの共用部分、内装、住宅設備などを一新する空室対策です。さらにターゲットに合うデザインや仕様に大幅変更するリノベーションを行う選択もあります。コストがかさむほどそれを回収するために、家賃を上げる必要が出てきます。

空室対策を行う上で意識したい3つの注意点

アパートの空室対策を行って後々「失敗した!」という結果にならないためには、次の3つの注意点を意識することが大切です。

注意点1:原因がわからないうちは空室対策をしない

空室の原因が明らかになっていない段階では、空室対策を行うべきではありません。なぜなら、やみくもに空室対策をしても効果をあげるのは難しいからです。

病気に例えるなら、病名(原因)がわからないのに、なんとなく治療や薬の処方をしても無意味なのと同じです。たとえ手間や時間がかかっても、原因をしっかり突き止めてから空室対策を打ったほうが結果的に効率的です。

注意点2:段階的に空室対策を進める

空室対策にはさまざまな方法があり、難易度やコストの有無が異なります。基本的な考え方として、はじめに難易度の低い空室対策、コストのかからない空室対策から手を付けるべきです。

なぜなら、 難易度が高くコストのかかる空室対策を行っても 空室が解消できる保証はないからです。逆にいえば、簡単でコストのかからない空室対策で効果があるなら、それに越したことはありません。

注意点3:家賃の値下げは最終手段

空室対策のひとつに「家賃の値下げ」がありますが、この選択は最終手段と考えましょう。家賃を値下げすること自体は簡単ですが、いったん下げた家賃を元に戻すのは難しく、長期的に見ると収入が大きく下がってしまいます。

合わせて、家賃を下げると利回りも低下するため、出口戦略(売却)も不利になりやすいです。とくに不動産投資ローンを返済中の方は家賃の値下げを慎重に考えるべきでしょう。

関連記事:アパート経営の管理業務とは?管理方法の違いと不動産管理会社の選び方

まとめ

ここではアパート経営(賃貸経営)の7つの空室対策を紹介しました。空室対策にはいくつかの選択があり、そのうちどれを選択するかで難易度やコストが変わってくることをご理解いただけたと思います。

重要なことは、「空室対策に早めに着手すること」「原因を明らかにしたうえで空室対策を進めること」です。空室対策を早めに実行することは大事ですが、思い込みやなんとなくの流れで空室対策を進めるのだけは避けましょう。手間とコストがムダになってしまう可能性が高いです。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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