【大家必見】家賃滞納されたときの回収方法・対処法を解説

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

今回は家賃滞納されたときの回収方法や対処方法について詳しく解説します。この記事を読めば、家賃が滞納した場合でも落ち着いて対応できるようになります。ぜひ、参考にしてみてください。

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「第25回賃貸住宅市場景況感調査(2021年6月発表)」では、賃貸経営の滞納率は約5.0%と述べられています。20人に1人が滞納となってしまうのです。大家さんからすれば、家賃滞納は死活問題となるため早急に解決しなければいけません。

家賃滞納が起こるケースとは?

大家さんにとって家賃滞納は死活問題となるため、家賃滞納トラブルが起こるケースを把握しておきましょう。

支払日を忘れていた

家賃滞納者は銀行口座の残高不足により、家賃が引き落とせない状態に陥っています。しかし、すべての家賃滞納者が金銭的に困窮しているとは限りません。身内の不幸などで急に実家へ帰省する必要があり、銀行へ入金することを忘れていたというようなミスもあります。

契約者が事故に遭遇した

入居者が体調を崩して入院したり、運悪く事故に遭遇したりする場合もあります。入院中は働くことができません。業務上の怪我や病気なら労災保険、業務外の怪我や病気なら傷病手当が支給されますが、申請から支給まで1ヵ月以上かかります。

お金がない

大東建託賃貸未来研究所の報告書によると、貯金がない人は貯金がある人と比較すると滞納確率は6倍以上も上がると述べられています。勤務先の業績が悪化して給与が減ったり、急な用事で予想外の出費があったりした場合に家賃が払えなくなります。

家賃を支払うつもりがない

金銭的に支払えない場合には、一般的に入居者側から管理会社に連絡が入ります。しかし、故意に支払わない悪質な入居者も存在します。居留守を使われたり音信不通になられたりすると非常に厄介です。

家賃滞納者への対処法・回収方法

家賃を滞納された場合でも、家賃保証会社と契約している入居者の場合は家賃を保証してもらえます。また、敷金を受け取っている場合は滞納家賃に充当することもあります。このような対処ができない場合は、以下の手順で家賃を回収していきましょう。

1.入居者と話し合う

まずは入居者へ電話をかけたり、自宅に訪問したりして話し合いましょう。家賃滞納者でも事情は各自で異なります。
病気や怪我で入院をしている場合は傷病手当や労災保険が支給されたタイミングで家賃を払ってもらうなど調整してください。入居者と話し合うことで解決できれば信頼関係を壊さずに済みます。

補足:入居者と折り合う気持ちを持つこと

家賃滞納の理由は各自で異なります。新型コロナウイルスの影響を受けて、店舗休業や売上減少に見舞われた方などの家賃滞納が問題となりました。このような病む得ない事情の場合は入居者と折り合う気持ちを持ち、支払方法や支払期日の延長など認めてあげるようにしましょう。

2.督促状を渡す

入居者と話し合いが難しい場合は、督促状を渡してください。滞納家賃が何か月分も貯まると支払いが得られにくくなります。そのため、賃貸経営の損失を最小限に抑えるために、速やかに督促手続きをしましょう。督促状に記載する内容は以下の通りです。

【督促状の内容】

請求金額 滞納家賃・共益費・水道光熱費などの請求額を記載する
支払期限 発送日から1週間程度の支払期限を設定する
振込先 支払日が遅れることを回避するために記載しておく
法的措置
  • 支払期限までに家賃が支払われない場合は法的措置をとることを記載する。
  • 遅延損害金や弁護士費用を合わせて請求することを記載しておく。
  • 指定期日に物件の明け渡しをして欲しい旨を記載しておく。

3.内容証明郵便を送る

督促状を渡しても家賃が支払われない場合は内容証明郵便で督促します。内容証明郵便はオーナー名義で出してもプレッシャーをかける効果が弱いため、弁護士名義で送ることをおすすめします。内容証明郵便に記載する内容は督促状と同じです。

4.裁判を起こす

裁判を起こす場合は、契約者の財産の下調べを行い適切な裁判制度を選択しましょう。

(1)契約者の財産を調べる

内容証明郵便を送付しても、家賃が支払われない場合は裁判を起こす必要があります。
しかし、契約者や連帯保証人に財産がなければ差し押さえができません。勤務先が分かれば、給与を差し押さえることはできますが無職の場合は難しいでしょう。差し押さえできる財産がない場合は、分割払いで和解するようにしましょう。

(2)適切な裁判制度を選択する

訴訟方法には「支払督促」「少額訴訟」「通常訴訟」があります。

支払督促
  • 裁判所から契約者に督促状を出してもらう
  • 入居者側から支払いの異議がない場合は裁判に出向く必要がない
  • 異議がある場合は通常訴訟に移行する
少額訴訟
  • 60万円以下の請求に関して1回の裁判で判決を出す
  • 1回の訴訟で入居者と連帯保証人へ同時に家賃を請求できる
通常訴訟 何度も裁判をしなければいけないが、強制的に立ち退きが請求できる

家賃回収する際の注意点

家賃回収する場合は、次のようなことに注意してください。

滞納家賃には消滅時効が存在する

家賃は民法169条の定期給付債権(一定期間に一定の金銭を支払わせることも目的とする債権)に該当するため、5年経過すると時効を迎えます。家賃管理を適切に行わないと、消滅時効により家賃が回収できなくなる恐れがあるので注意してください。

違法となる家賃督促をしない

家賃督促の方法を間違えると違法となり、入居者から名誉毀損や慰謝料請求される恐れがあるため注意してください。

【家賃督促(違法行為)】

  • 早朝や深夜など適切ではない時間帯に電話する
  • 勤務先に電話をかける
  • 玄関ドアに家賃督促の貼り紙を貼る
  • 借主の部屋に居座り続ける
  • 支払い義務のない人に家賃督促する
  • 部屋の鍵を相談せずに交換してしまう
  • 利率が年14.6%以上の遅延損害金を請求する

家賃支払い能力がない人に時間をかけない

無職や借金があるなど支払い能力がない入居者に対しては、退去してもらうことを優先した方が結果的に損失は小さくなります。1ヵ月でも早く退去してもらい、新たな入居者を探しましょう。入居者の支払い能力に応じては「滞納した家賃は支払わなくてよいため、来月末までに退去してください。」と述べるのが適切である場合もあります。

家賃滞納のリスク対策

家賃滞納トラブルは解決するために大きな労力がかかります。そのため、家賃滞納を未然に防止しましょう。ここでは、家賃滞納のリスク対策をご紹介します。

入居審査をシッカリと行う

家賃滞納を未然に防止するために、入居者審査をシッカリと行いましょう。優良な入居者を選ぶための基準は4つです。

【入居審査の項目】

  • 入居者の支払い能力(家賃に見合った年収基準であるか?)
  • 連帯保証人の支払い能力(確実に連絡がとれる場所に住んでいるか?)
  • 入居形態(単身入居か?同棲やルームシェアであるか?)
  • 入居者の人柄(家賃滞納トラブルを起こしそうな人か?)

家賃を自動引き落としにする

家賃滞納の理由の1つに、支払日を忘れていたミスがあります。このような家賃滞納トラブルを防止するために、家賃を自動引き落としにしておきましょう。
とくに、クレジットカード払いであれば、銀行口座のように残高不足による引き落としができないトラブルも起きません。クレジットカードによる家賃の自動引き落としに設定しておけば安心できます。

連帯保証人を付ける

入居者が家賃を滞納するリスクに備えて、連帯保証人を付けましょう。連帯保証人は入居者と同じ責任を負うため、家賃滞納時に連帯保証人へ請求できるようになります。
とくに、学生や生活保護受給者など支払能力が低い場合は連帯保証人を付けておくケースが多いです。

家賃保証会社を付ける

両親や親族が他界しているなど、諸事情から連帯保証人が付けられない入居者がいます。このような入居者には、家賃保証会社に加入してもらいましょう。
家賃保証会社は入居者が家賃を滞納した場合に、家賃を立て替えて支払ってくれます。入居者からの家賃回収も家賃保証会社が行ってくれるため便利です。家賃保証会社を利用するための料金も入居者負担となります。

家賃滞納トラブルは専門家に相談

家賃滞納について理解を深めて頂けたと思います。しかし、家賃滞納トラブルが発生した場合は専門家へご相談ください。ここでは、家賃滞納トラブルを専門家に相談するメリットをご紹介します。

裁判費用まで請求できる

家賃滞納トラブルを解決するために裁判を起こす必要がある場合、自分で行うと裁判費用が請求できません。裁判費用は不動産大家が負担する場合が圧倒的に多いです。
しかし、専門家に督促業務を依頼すれば、契約者に滞納分家賃だけでなく裁判費用や弁護士費用を請求しやすくなります。

督促状の作成や裁判手続きを委託できる

家賃滞納者に督促状を作成したり、裁判手続きをしたりするのは想像以上に大変です。法律に関する知識がなければ失敗に終わることもあります。
これらを専門家にお任せすれば、全ての業務を代行してもらえます。法律に関する専門家に業務委託すれば、安心して手続きを済ませられるでしょう。

精神的なストレスから解放される

大家さんは家賃を滞納されるだけでも大きなストレスとなります。その上で、家賃滞納者と交渉したり裁判したりするのは、想像以上にストレスがかかることでしょう。専門家に家賃回収業務をお任せすればストレスから解放されます。

家賃回収以外にも不動産管理業務について下記記事で解説しています。参考にご確認ください。
関連記事:アパート経営の管理業務とは?管理方法の違いと不動産管理会社の選び方

まとめ

今回は家賃滞納トラブル時の対処法と回収方法について解説しました。家賃滞納は賃貸経営上の損失となるため、早急に解決しなければいけません。ご自身でも家賃回収は行えますが、裁判費用を入居者負担にしたい方や早急にトラブルを解決したい方は専門家へ相談をしましょう。「マルイシ税理士法人」でも家賃滞納トラブルの解決サポートを行っております。現在、家賃滞納でお悩みの方はお気軽にご相談ください。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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