買換え特例の適用も含めた節税策を

賃貸アパート・マンションの売却時にかかる税金と利用できる特例制度

賃貸マンションを売却した際、対象となる税金は譲渡所得税です。 譲渡所得税は売却利益が発生した場合に税金なので、不動産を売却しましたら税務上の利益が出ているのかを確認する必要があります。 また賃貸物件を売却したケースと自宅を売却したケースでは、計算過程や適用できる特例制度が異なる部分もありますのでご確認ください。

監修者情報

税理士 藤井 幹久 (ふじい みきひさ)

マルイシ税理士法人 代表社員税理士

専門分野: 不動産税務、相続・事業承継対策、税務顧問、セミナー講師等

不動産をお持ちの方(個人及び会社)の、税理士業務と相続・事業承継対策を専門としています。これまでに10,000件を超える不動産と相続に関する税務相談を行ってまいりました。

目次

賃貸の不動産を売却する際の取り扱いについて


売却利益は、不動産の売却代金から購入金額および、仲介手数料など売却する際に支払ったの譲渡費用を控除した金額をいいます。
譲渡所得税は売却利益に税率を乗じて算出するので、売却損失が発生した場合、税金はかかりません。

❮ 譲渡所得税の計算式 ❯
売却金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除=売却利益(譲渡所得)
譲渡所得×税率=譲渡所得税

譲渡所得税は、所有期間に応じて「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の税率を適用して税額を算出します。
短期譲渡所得は、売却した年の1月1日時点の所有期間が5年以下の場合が対象です。
長期譲渡所得は、所有期間が5年超の不動産を売却したケースが対象となります。
所有期間は売却した年の1月1日時点で判断しますので、年の途中で所有期間が5年を超えても短期譲渡所得に該当するのでご注意ください。

一方で、相続により取得した賃貸アパートなどを売却した場合、先代の所有期間も引き継ぐため、合計の所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得です。
なお譲渡所得税の税率は固定であり、売却利益の大小で税率が変わることはありません。
短期譲渡所得の方が長期譲渡所得よりも税率が高いため、支払う税金を抑えるために長期譲渡所得に該当するまで売却を待つ手段もあります。

❮ 不動産譲渡所得の税率 ❯

所得区分 所有期間 所得税(※) 地方税 合計(※)
短期譲渡所得 5年以下 30.63% 9% 39.63%
長期譲渡所得 5年超 15.315% 5% 20.315%

※復興特別所得税を含む

賃貸不動産の売却時に注意すべきポイント

不動産を売却した場合の計算方法は、不動産の種類によって変わることは基本的にありません。
しかし事業用と非事業用の不動産では、一部計算方法が異なる部分や、賃貸不動産を売却した際に注意すべきポイントがありますのでご紹介します。

建物の取得費の金額は確定申告書の数字を使用する

売却不動産に建物がある場合、購入金額から減価償却費相当額を控除した額が取得費となります。
自宅など非事業用資産を売却した際の減価償却費は、不動産譲渡所得用の計算式に基づき算出します。
それに対し売却資産が賃貸不動産の場合、非事業用資産で用いる減価償却費の計算は行わず、確定申告書の収支内訳書(青色決算書)に記載してある残存価額が譲渡所得の取得費です。
事業用資産は、自宅などの非事業用資産よりも償却期間が短いため、同じ金額・構造・築年数の建物の場合、賃貸不動産の取得費の金額は小さくなります。

譲渡所得と不動産所得は別の所得区分

不動産賃貸収入は不動産所得、賃貸不動産を売却した場合は譲渡所得と、同じ不動産から得た収入でも、対象となる所得区分は異なります。
不動産所得と譲渡所得では適用される税率が異なりますし、不動産に対しての経費はどちら一方の費用としてしか計上できません。
たとえば不動産を売却するために借主へ支払った立ち退き料は、不動産所得ではなく譲渡所得の経費として計上します。

また不動産所得の損失は、給与所得などと損益通算できますが、売却損失については他の所得と損益通算はできません。
不動産を同年中に複数売却した場合については、売却利益と売却損失を相殺することは可能なので、損益が発生する不動産を処分する際は同じタイミングで売却した方が節税効果を得られます。

賃貸アパート・マンションの買換え利用できる特例


賃貸アパート・マンションを売却して新しく事業用資産を購入した場合、譲渡益の一部に対する課税を将来に繰り延べることができる、「特定事業用資産の買換え特例」を利用できます。
売却金額よりも買換金額の方が多い場合、売却金額に20%の割合(※)を乗じた額を収入金額として譲渡所得の計算を行います。
売却金額よりも買換金額の方が少ない場合は、その差額と買換金額に課税割合を掛けた額との合計額を収入金額として譲渡所得の計算を行うため、概ね80%の譲渡所得税を軽減できる特例制度です。
※特定の地域から地域への買換する際は、20%の課税割合が25%または30%になる場合もあります。

<特定事業用資産の買換え特例の計算式>

売却金額と買換金額の大小比較 譲渡所得の計算式
売却金額≦買換金額
  • 収入金額=売却金額×0.2
  • 必要経費=(売却資産の取得費+譲渡費用)×0.2
  • 譲渡所得=収入金額-必要経費
売却金額>買換金額
  • 収入金額=売却金額-買換金額×0.8
  • 必要経費=(売却資産の取得費+譲渡費用)×(収入金額÷売却金額)
  • 譲渡所得=収入金額-必要経費

※課税割合が20%の場合

事業用資産の買換えの特例が適用できるケースは、特定の地域内に事業用の不動産を売却したタイミングで、一定期間内に特定の地域内の不動産を購入し、かつ取得した日から1年以内にその買換資産を事業用として利用した場合です。
売却資産と買換資産には組み合わせがあり、現在特例の適用対象となる組み合わせは7通り存在します。

代表的な組み合わせ

売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超える不動産を売却し、国内にある土地等や建物を取得するケースです。
売却時点で事業用として使用していない不動産や、特例を適用する目的で一時的に事業として使用した不動産を売却した際は、特定事業用資産の買換え特例は適用できません。
また購入する土地等には300㎡以上の面積要件があり、事務所や事業者などの特定施設の敷地として利用することが条件です。

そのため事業用として購入した土地であっても、特定施設がない物品置場や駐車場として使用する場合には、特例を適用することはできません。
売却資産と買換資産の組み合わせにより、適用要件は変わりますので、買換え特例を適用する際は、売却前に専門家へ相談することをオススメします。
なお特例を適用する際は確定申告が必要であり、申告時期は売却した翌年2月16日から3月15日の1か月間です。
申告期限を過ぎると特例が適用できなくなってしまうので、特例要件の確認と共に、申告で必要な書類等も揃える必要があります。

まとめ

不動産譲渡所得の計算の流れは、売却した不動産にかかわらず基本的には同じです。
ただ減価償却費の計算は事業用と非事業用の不動産では計算が異なりますし、適用できる特例の種類も違います。
事業用資産を買い換える場合には、特定事業用資産の買換え特例の適用も選択肢となりますが、適用要件をすべて満たした場合のみ特例を利用できます。
そのため売却時には税金シミュレーションを行い、売却利益が発生する際は専門家に相談して、買換え特例の適用も含めた節税策をご検討ください。

  • ページタイトルと
    URLがコピーされました

不動産と相続の専⾨誌
マルイシメディアの
公式アカウントから最新記事をお届けしています

マルイシメディアを
フォロー