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居住用財産の譲渡損失の損益通算と繰越控除を税理士が解説

売却による赤字(譲渡損失)が発生した際、譲渡所得税は課されませんし、売却に関する申告も不要です。しかし売却した不動産が居住用財産の場合、他の所得と赤字を相殺できる特例制度を適用できます。本記事では居住用財産の譲渡損失の損益通算と繰越控除特例の種類と、適用する際の要件について解説します。

監修者情報

税理士 藤井 幹久 (ふじい みきひさ)

マルイシ税理士法人 代表社員税理士

専門分野: 不動産税務、相続・事業承継対策、税務顧問、セミナー講師等

不動産をお持ちの方(個人及び会社)の、税理士業務と相続・事業承継対策を専門としています。これまでに10,000件を超える不動産と相続に関する税務相談を行ってまいりました。

目次

居住用財産の譲渡損失の繰越控除制度とは?


不動産同士の譲渡所得の損益は通算することが可能ですが、他の所得との損益通算はできません。
しかし居住用財産の譲渡損失の繰越控除制度を適用できる場合に限り、他の所得と損益通算できるようになり、相殺しきれなかった損失は翌年以降に繰り越しことも可能です。
特例制度は2種類あり、売却資産や売却後に居住する物件の種類によって、適用できる制度は変わってきます。

居住用財産買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

「居住用財産買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」は、マイホーム売却して損失が発生した際、新たなマイホームをローンで購入した場合に適用できる特例です。
特例要件を満たした場合、他の所得と損益通算することが可能となり、所得税を先に納めていた場合は、確定申告で還付されます。
特例を適用した年だけで赤字をすべて損益通算できなかった場合、残額は売却した年の翌年以後最大3年繰り越すことが可能です。
(合計所得金額が3,000万円を超える場合は、繰越控除は適用できません。)
また住宅ローン控除との併用適用もできるため、売却と購入のタイミングが同年であれば、一緒に確定申告で特例適用の手続きを行います。

<特例要件>

  • 売却損失が発生していること
  • 売却資産は国内に存在し、居住用として使用していた
  • 売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えている
  • 売却資産から転居したのは3年前の年の1月2日以後
  • 親族など特別関係者との売買ではない
  • 買換資産は前年から翌年までの間に購入し、床面積は50㎡以上
  • 売却した年の翌年年末までに買換資産に居住すること
  • 買換資産はローンで購入し、返済期間は10年以上
  • 譲渡所得の居住用財産の特例を他に適用していないこと

特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」は、住宅ローンのあるマイホームを住宅ローンの残高を下回る代金で売却し、譲渡損失が発生した場合に適用できる特例制度です。
新たなマイホームを購入しない場合でも適用できるのが特徴で、買換資産を取得した場合には、住宅ローン控除を一緒に適用することもできます。
損益通算できる金額は、対象となる金額は売却損失額と売却金額を差し引いたローン残高のいずれか少ない額です。
特例を適用した年で損益通算しきれなかった場合、残額は売却した年の翌年以後最大3年繰り越せます。
(合計所得金額が3,000万円を超える場合は、繰越控除は適用できません。)

<特例要件>

  • 売却損失が発生していること
  • 売却資産に10年以上の返済期間が残っているローンがある
  • 売却金額よりもローン残高の方が多い
  • 売却資産は国内に存在し、居住用として使用していた
  • 売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えている
  • 売却資産から転居したのは3年前の年の1月2日以後
  • 親族など特別関係者との売買ではない
  • 譲渡所得の居住用財産の特例を他に適用していないこと

居住用財産の譲渡損失制度の共通点と違いとは?


「居住用財産買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」と、「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」の相違点を下記の表にまとめました。

<譲渡損失の特例制度の違い>

各制度の相違点 居住用財産買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
新しく自宅を購入する必要 あり
(10年以上のローン有)
なし
(購入していても可)
譲渡資産のローン残高の有無 なし
(残高が残っていても可)
あり
(売却金額以上の残高があること)
損益通算可能額 売却損失額 売却損失額と売却金額を差し引いたローン残高のいずれが少ない額

双方の特例を併用適用することはできませんが、最大で損益通算できる金額は同じです。
ただ基本的には、「居住用財産買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」の方が控除できる金額は多くなります。
そのため新しい自宅を購入する場合は、最初に「居住用財産買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」の適用要件を確認し、要件を満たさなかった人や新たな自宅を購入しない方は、「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」の適用要件を確認してください。

まとめ

自宅を売却し譲渡損失が発生した場合は、本記事でご紹介した居住用財産の譲渡損失制度の適用要件をご確認ください。
適用要件を満たせば損失額を他の所得と損益通算し、先に所得税を納めている場合は税金が還付されることもあります。
特例を適用するためには確定申告が必要で、申告期間は自宅を売却した翌年2月16日から3月15日までです。

申告期限までに申告書を提出しないと、特例原則は適用できませんのでご注意ください。
なお売却利益が発生した場合、確定申告により譲渡所得税を納めることになります。
売却利益が発生した際に適用できる譲渡所得の特例制度もありますので、不動産を売却された際は、確定申告前に税理士へご相談することをオススメします。

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