贈与税のお尋ねとは?知っておきたい対処法について税理士が解説

この記事の執筆者 税理士 藤井 幹久

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

【執筆者:税理士・藤井幹久】

不動産を購入したり名義変更した際、税務署から贈与税についてのお尋ね文書が送られてくることがあります。

お尋ねへの回答は任意ですが、反応せずに放置していると、税務署は税務調査に切り替えて内容確認をしてくる可能性もありますので気を付けなければいけません。

今回は贈与税のお尋ねの内容と送付される時期、そして手元に届いた際の対処法について解説します。

そもそも贈与税について詳しく理解したい方は、「生前贈与とは?贈与税の計算方法や相続税対策について」をご一読ください。

贈与税のお尋ねと送付されるタイミング

贈与税のお尋ねとは?

不動産を購入したり名義変更した際、税務署から贈与税についての確認の文書のことを指します。

贈与税のお尋ねはいつ来る?タイミングについて

贈与税のお尋ねが送付されるタイミングは、確定申告前と確定申告後の2パターンあります。

確定申告前(不動産購入時)

贈与税は贈与者から財産を無償でもらった場合に対象となり、不動産の購入資金を援助してもらった際は、支援金が贈与税の対象です。

確定申告前に送付される贈与税のお尋ねは、税務署が不動産の購入資金の内訳を確認するために送付してきます。

そのため資金援助を一切受けていない場合であっても、贈与税のお尋ね書が届くこともあります。

また税務署は不動産に関する情報を法務局の登記事項から把握しているため、不動産登記した年や翌年に送られてくることが多いです。

確定申告後(贈与税の申告書を提出しなかった場合)

確定申告後に送付される贈与税のお尋ねは、贈与税の申告書を提出していない場合に送られてきます。

贈与税には110万円の基礎控除額があるため、贈与を受けた金額が基礎控除額以内なら無税であり、贈与税の申告をしなくても問題ありませんが、基礎控除額を超えた場合には申告および納税手続きが必要です。

不動産の評価額は数百万円から数千万円するものもありますので、贈与により不動産を取得したと思われる人が贈与税の申告をしていなかった場合、事実関係を確認するために税務署はお尋ね書を送付してきます。

贈与税のお尋ねの内容と対処法

贈与税のお尋ねは、税務署が贈与事実を把握し、納税者に納税義務を果たしてもらうために実施されます。
納税義務を果たさなければ、本来納める税金に加え、罰則も課せられることになりますのでご注意ください。

お尋ね書の種類

お尋ね書には種類があり、質問によって回答方法も変わってきます。

不動産購入資金に対するお尋ね書

不動産の購入資金に対するお尋ね書については、購入資金の内訳(現金、ローン、資金援助など)を記載してください。
不動産の取得内容に関するものであれば、もらった不動産の種類や金銭授受の有無を記載します。

贈与税の申告に対するお尋ね書

贈与税のお尋ねは税務調査ではないため、お尋ねに対しての回答をしなくても罰則を受けることはありません。

また贈与事実がなければ贈与税の課税対象にはなりませんので、不動産の購入資金を自己資金でまかなっている場合、お尋ね書が送られてきたとしても贈与税の申告手続きは不要です。

一方で、税務署は何かしらの目的があってお尋ね書を送付しておりますので、回答しないと心証は悪くなります。

確定申告後に送付される贈与税のお尋ねに関しては、贈与税の申告が必要になる見込みのある人に対して送付してきますので、回答しない場合には贈与事実の確認のために税務調査を実施することもありますので注意しましょう。

贈与税の申告ミス・無申告に対する罰則

贈与税の申告ミスをした場合、延滞税・加算税の対象となります。

延滞税は、申告期限(納付期限)までに税金を納めなかった場合に発生する税金です。

納付期限から納税が完了する時点までの日数換算で計算し、申告書を提出しても納税をしていなければ延滞税は発生します。

納税するのが遅くなれば支払う延滞税が増えていきますので、早めに納付を完了させることが大切です。

3種類の加算税

加算税は、申告を正しくしなかった場合に課されるペナルティで、「無申告加算税」・「過少申告加算税」・「重加算税」の3種類あります。

無申告加算税

申告期限までに申告書を提出できなかった場合に課される罰則で、原則として本税の15%などを罰金として納めなければなりません。

過少申告加算税

期限内に申告書を提出した後、その税額が少なすぎた場合に課される罰則で、原則として新たに納める税金の10%などを罰金として納める必要があります。

重加算税

意図的に申告内容をごまかした場合に課されるペナルティで、税率は35%と重く、悪質な無申告者に対しては40%の税率が課されます。

加算税の税率

なお加算税の税率は、税務調査の有無によって変化します。
自主的に申告内容を修正した場合には過少申告加算税は課されず、自主的な期限後申告の場合の無申告加算税は5%です。

無申告加算税は税務調査により脱税を指摘された場合に対象となりますので、自主的に申告誤りや申告漏れを把握した際は速やかに対処しましょう。

贈与を受けた際に利用できる特例

贈与税の特例制度を活用すれば、110万円を超える贈与を受けた場合でも、贈与税を非課税にすることも可能です。

贈与税の特例制度は多数存在しますが、その中でも適用しやすいのが次の3種類の特例制度です。

主な贈与税の特例制度と概要

特例制度の名称 特例の概要
相続時精算課税制度
  • すべての贈与財産が対象
  • 最大2,500万円まで非課税
  • 子、孫が適用対象者
  • 特例適用財産は相続時に精算する
住宅等資金の贈与税の非課税制度
  • 住宅購入資金の贈与を受けた際に適用
  • 購入時期、物件種類により非課税控除額が異なる
  • (令和3年分は最大1,500万円)

  • 子、孫が適用対象者
贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)
  • 自宅または自宅の購入資金が対象
  • 最大2,000万円まで非課税
  • 婚姻期間20年以上の配偶者が適用対象者
  • 1度しか利用できない

特例制度はそれぞれ適用要件があり、要件を満たした人だけが適用できます。

贈与税の申告期限は翌年2月1日から3月15日の1か月半で、申告期限までに特例を適用する内容を記載した贈与税の申告書を提出してください。

申告期限を1日でも過ぎると適用は一切認められない特例もありますので、特例制度を利用する際は申告期限を厳守してください。

まとめ

贈与税のお尋ねが届きましたら、どのような目的で送付されたのか、「内容」をよく確認しましょう。

申告期限前に来たお尋ね書については、質問内容に回答すれば問題ありませんし、贈与により取得した財産があれば、申告期限までに贈与税の申告手続きを済ませば大丈夫です。

申告期限後に送付されるお尋ね書は、贈与税の申告が必要なのかを確認する内容が多いです。

贈与を受けた覚えがなければその旨を回答し、贈与税の申告が必要な場合は速やかに手続きしないと、税務調査の対象になる可能性もあるのでご注意ください。

❗なお贈与税の特例制度は、贈与する財産や、贈与者と受贈者の関係性によって適用要件は違います。

特例適用が否認されれば、多くの税金を納めることになりかねませんので、贈与税の特例制度の利用を検討している場合は、事前に贈与に詳しい税理士へご相談することをオススメします。

監修者情報

税理士

藤井 幹久

Fujii Mikihisa

マルイシ税理士法人の代表税理士です。責任者として、相談業務から申告実務までの税理士業務に取り組んでおります。また、不動産税務と相続税・相続対策を主として、提携の税理士やコンサルタント及び弁護士等の他の士業と協業しながら、「不動産と相続」の問題解決に努めております。

相談業務を最も大切に考えており、多いときには月に100件以上の相談対応をしています。セミナー・研修の講師や執筆を数多く行っており、「大手不動産会社の全国営業マン向け税務研修の講師」「専門誌での連載コラムの執筆」「書籍の執筆」など多くの実績があります。

税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。

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