書類不備があれば特例は受けられません。

【農地に対する相続税と注意点】納税猶予の特例制度についても解説

相続により農地を取得する場合、一定の要件を満たすことで農地の納税猶予の特例制度が適用できます。 納税猶予の特例を上手く活用すれば、相続税を支払わずに農業を引き継ぐことも可能ですが、途中で特例適用が打ち切りになるケースもありますので要注意です。 本記事では農地を相続する際に知っておくべきポイントと、農地の納税猶予の特例制度について解説します。

監修者情報

税理士 藤井 幹久 (ふじい みきひさ)

マルイシ税理士法人 代表社員税理士

専門分野: 不動産税務、相続・事業承継対策、税務顧問、セミナー講師等

不動産をお持ちの方(個人及び会社)の、税理士業務と相続・事業承継対策を専門としています。これまでに10,000件を超える不動産と相続に関する税務相談を行ってまいりました。

目次

農地を相続する際に注意すべきポイント


相続税は亡くなった人が保有するすべての財産に対して課税され、納税期限までに現金一括で支払うのが原則です。
相続財産の中で不動産の比率が高いと、相続税の納税資金の確保するのが大変になりますので、農地の相続税評価額は正確に把握してください。

農地の相続税評価額は固定資産税評価額よりも高い

農地は面積が広いため、1㎡当たりの単価が低くても全体としての土地の価値は高くなることが多いです。
相続税評価額の評価方法には路線価方式と倍率方式の2種類あり、農地の相続税評価額は、固定資産税評価額よりも高く算出されます。
たとえば市街地農地は原則路線価方式により評価しますが、評価額は宅地とあまり変わらない金額になることもあります。
倍率方式は固定資産税に評価倍率を乗じて評価額を計算しますが、地域ごとに農地に乗じる倍率は異なり、適用する倍率が10倍以上となる地域も珍しくありません。
農地の固定資産税評価額が500万円でも、10倍の評価倍率を適用する場合、相続税評価額は5,000万円になりますのでご注意ください。

農地の減額補正は相続人が計算しなければならない

農地には評価額を減額する制度がいくつも用意されています。

【農地の評価額を下げる主な制度】

  • 貸付農地の減額
  • 宅地造成費の控除
  • 生産緑地の減額補正
  • 地積規模の大きな宅地の評価補正

耕作権、永小作権などの目的となっている農地は、耕作権や永小作権の価額分だけ評価額を減額することが可能です。
市街地にある農地は、宅地に転用するとした場合における宅地造成費相当額を控除できます。
生産緑地は市街化区域内の土地のうち、自治体から農地として使用することが指定されている土地をいい、生産緑地指定を受けている農地の評価額は減額補正の対象です。
市街地農地や市街地周辺農地のうち、面積が500㎡以上ある土地については、地積規模の大きな宅地の評価補正を適用できるケースもあります。
このように農地に対する減額補正は数多く存在しますので、補正計算をすることで農地の評価額を大きく下げることも可能です。

しかし相続税の計算は相続人(納税者)自身が行う必要があり、補正計算の見落としがあれば、過大評価した農地に対する相続税を納めることになります。
逆に補正計算を間違えれば税務署から指摘され、本税に加えて加算税・延滞税を支払うことになりますので、評価額を正確に算出することが求められます。

納税猶予制度は農業相続人しか利用できない

農地の納税猶予の特例は、農業相続人のみが適用できます。
相続財産に農地があるだけでは納税猶予の特例は受けられず、亡くなった人が農業を営んでいた場合でも、農業をしない人の農地相続に対しては適用できません。
また特例を適用する際は、要件をすべて満たすことはもちろんのこと、期限内に必要書類を揃えて申告する必要があります。

農地の納税猶予の特例の概要


農地の納税猶予の特例は農地を相続し、農業を引き継ぐ人が適用できる制度です。
他の相続税の特例制度と違い、納税猶予の特例は適用後に提出することになる書類もあります。

相続税の農地の納税猶予制度とは

相続税の農地の納税猶予制度は、農業を営んでいた被相続人から農地を相続した際に適用できる特例で、農地等の価額から農業投資価格の価額を超える部分に対応する相続税額が猶予されます。
特例適用後は相続人が農業を継続している場合に限り納税が猶予され、特例を適用後に農地を売却したり、廃業するなど継続要件を満たさなくなった場合、その時点で相続税を納税猶予は打ち切りです。
納税猶予が打ち切りになれば猶予税額と利子税を納めることになりますが、免除要件を満たすことで猶予している相続税の支払いが不要になります。

免除要件に該当するケースはいくつかありますが、一般的なのは農業相続人の死亡による納税猶予の免除です。
そのため納税猶予の特例は、農業相続人が生涯農業を営むことを前提に適用するか検討しなければなりません。

相続税の納税猶予の対象となる農地

納税猶予の特例適用対象になる農地は、特定市街化区域農地等に該当するものを除く農地および、採草放牧地、準農地です。
市街化区域内にある農地は原則として納税猶予の適用対象外ですが、生産緑地区域内にある農地については納税猶予の特例は適用可能です。
また特例を適用する農地は、相続税の申告期限までに遺産分割されたものに限られます。
申告期限までに遺産分割協議がまとまっていない場合、納税猶予の特例は適用できませんので、相続開始日の翌日から10か月以内に相続財産を分割してください。

納税猶予の適用要件・手続き

相続税の農地の納税猶予の特例は、被相続人(亡くなった人)と農業相続人の双方に要件があります。
被相続人は相続開始時点まで農業を営んでいること、農業相続人は相続税の申告期限までに農業経営を開始し、相続以後も継続して農業を営むことが要件です。
特例を適用する際は必要事項を記載し、期限内に相続税の申告書を提出しなければなりません。
添付書類には、相続税の納税猶予に関する適格者証明書や担保関係書類などがあり、農地等納税猶予税額および利子税の額に見合う担保提供も必要です。
適格者証明書は、農地のある市区町村の農業委員会で取得することになるため、事前に申請手続きを行ってください。

また相続税の申告期限から3年目ごとに「継続届出書」を提出しなければならず、1度でも届出書の提出を怠ると納税猶予は打ち切られます。
継続届出書には納税猶予を引き続き適用する旨と、特例農地等に係る農業経営に関する事項等を記載します。

納税猶予の特例の打ち切り要件

農地の納税猶予の特例の打ち切りには、「一部確定」と「全部確定」の2種類あります。
「一部確定」に該当した場合、納税猶予の適用対象外となった部分に対応する相続税と利子税を納めなければなりません。
「全部確定」に該当した場合、すべての農地の納税猶予が打ち切りとなり、猶予されている相続税全額と利子税を納めることになります。

【一部確定の該当主な事由】

  • 特例適用した農地等の面積20%以下を譲渡・贈与・転用等するなど、農地として利用しなくなった場合
  • 特例適用した準農地について、相続税の申告期限後10年以内に農業用として利用していない場合

【全部確定の該当主な事由】

  • 特例適用した農地等の面積20%超を譲渡・贈与・転用等するなど、農地として利用しなくなった場合
  • 農業相続人が農業をやめた場合
  • 継続届出書を提出しなかった場合

まとめ


農地の納税猶予の特例は節税効果の高い制度ですが適用要件は厳しく、書類不備があれば特例は受けられません。
特例適用後も継続して農地として使用しなければならず、3年ごとに継続届出書の提出も必要です。
納税猶予が打ち切りとなれば本税と加えて利子税を納めることになりますので、農業を継続する予定がない場合や、農地を売却する見込みがあるときは、適用要件を満たしても納税猶予の特例を利用しないことも選択肢になります。

ただ農地の納税猶予の特例を適用するかの判断を相続人の方だけで行うのは難しく、特例を適用する際は相続税を専門している税理士へ相談するのが望ましいです。
マルイシ税理士法人は不動産と相続に強い税理士事務所ですので、農地相続に関する不明点や悩み事がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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