購入金額がわからないケースで活用できる

市街地価格指数を使った不動産取得費の計算方法について

不動産を売却した際に対象となる譲渡所得税は、売却金額から購入金額の差額に対して課される税金です。 最近購入した不動産であれば契約書で購入金額を確認できますが、契約書を紛失したり相続で取得した不動産は購入金額がわからない場合もあります。 市街地価格指数を使った不動産取得費の計算は、そのような購入金額がわからないケースで活用できる方法ですので、計算のしかたと注意点について解説します。

監修者情報

税理士 藤井 幹久 (ふじい みきひさ)

マルイシ税理士法人 代表社員税理士

専門分野: 不動産税務、相続・事業承継対策、税務顧問、セミナー講師等

不動産をお持ちの方(個人及び会社)の、税理士業務と相続・事業承継対策を専門としています。これまでに10,000件を超える不動産と相続に関する税務相談を行ってまいりました。

目次

市街地価格指数とは?


市街地価格指数とは、市街地の宅地価格の推移を表す指標です。
特定の時点(下記図は2010年3月末)の数値を「100」とし、その地点の数値と現在の価格を比べることで市街地の価格変動を確認できるため、地価の長期的変動の傾向や平均的な地価の推移を調べるのに適しています。
一般財団法人日本不動産研究所は、毎年3月末と9月末に全国198都市の宅地価格を調査し、指数化した市街地価格指数により商業地・住宅地・工業地などの用途別で数値を公表しています。

出典:一般財団法人 日本不動産研究所
https://www.reinet.or.jp/wp-content/uploads/2010/10/bfac62fb9e230962b9453e459e57fa551.pdf

市街地価格指数を用いる際の注意点としては、指数は各地域の宅地価格の推移変動を確認するものであり、計測する地点ごとで指数の数値は異なりますので、都市の地価を指数により比較することはできません。
なおその他の指数としては、昭和11年9月末を「1.00」とする戦前基準市街地価格指数や、沖縄県を除く全国46の都市を対象に木造建築費を調査した「全国木造建築費指数」が存在します。

市街地価格指数から不動産取得費を計算する方法

不動産取得費が不明な場合、売却金額の5%を概算取得費とすることが認められています。
しかし概算取得費を用いると95%が譲渡所得の課税対象となるため、納税者が不利にならないためにも、市街地価格指数を使って不動産取得費を算出する方法も検討してください。

市街地価格指数を用いた不動産取得費の算出方法

市街地価格指数を用いた不動産取得費は、現在と購入時点の地価の差を市街地価格指数から割り出す方法で、次の計算式により算出します。
取得時点の市街地価格指数より売却時点の指数の方が高い場合、その地域の地価は上昇していることを意味しますので譲渡所得は発生し、差額に対して譲渡所得税が課されます。

<市街化価格指数による取得費の計算式>
売却金額×(取得時点の市街地価格指数÷売却時点の市街地価格指数)=不動産取得費

〇市街化価格指数を用いた取得費の計算例

  • 売却金額:3,000万円
  • 取得時点の市街地価格指数:90
  • 売却時点の市街地価格指数:110

・3,000万円×(90÷110)=2,454万5,455円(不動産取得費)
・3,000万円−2,454万5,455円=545万4545円(譲渡所得金額)

※概算取得費を用いた場合

  • 3,000万円×5%=150万円(不動産取得費)
  • 3,000万円-150万円=2,850万円(譲渡所得金額)

市街地価格指数の調べ方

最新の市街地価格指数はインターネット上に公開されており、WEB会員になると過去10回分の指数はPDF閲覧が可能です。
過去の調査分を確認したい場合は冊子を購入する必要があり、インターネット販売サイトおよび全国の官報販売所でお求めください。
市街地価格指数の調査対象都市は公表されていませんが、六大都市(東京区部、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市)、三大都市圏を除く政令指定都市、県庁所在都市はすべて調査対象となっています。
市区町村ごとに市街化価格指数は存在しないため、売却した不動産の用途(商業地・住宅地・工業地)を確認し、対象地に近い地域の指数を用いて計算することになります。

市街地価格指数を使用する上で注意すべきポイント


税金の計算方法は法令や通達で規定されていますが、市街地価格指数を使用した不動産取得費の計算は、法令・通達で定められている方法ではありません。
市街地価格指数により不動産取得費を計算すると、税務署から計算過程の提示を求められる可能性があります。

不動産取得費の実額が確認できる場合は使用できない

譲渡所得の不動産取得費は実際に購入した金額を用いて計算するのが原則で、路線価や固定資産税評価額などから不動産取得費を算出することは認められていません。
市街地価格指数から算出した不動産取得費については、国税不服審判所の裁決で認められた事例がありますが、売買契約書などにより実際の取得費が確認できない場合に限られます。
購入金額が確認できる状況では、指数を用いて不動産取得費を算出することは認められていませんのでご注意ください。

取得費を算出する際に使用した指標等は提示すること

市街地価格指数から不動産取得費を算出するのは、取得費が不明ない場合などに限られた例外的な措置です。
市街地価格指数は不動産取得費を計算するために指標ではないため、市街化価格指数を用いて算出した取得費の金額に合理性があることを示す必要があります。

<市街地価格指数を適用する際の基本条件>

  • 取得費を確認できる資料等がない
  • 対象物件が宅地であること
  • 対象物件周辺地域の地価が市街地価格指数と同水準で推移していること

❗先ほどご説明しましたとおり、”不動産の取得費が確認できる場合、市街地価格指数を用いることはできません。

市街地価格指数は市街地の宅地価格の推移を表すものですので、農地や山林など宅地以外の地目の土地に適用することも難しいです。
また宅地であっても区画整理や開発事業が行われたことにより、土地の価値が大きく変動することもあります。
市街地価格指数は主要198都市の価格の推移ですので、売却した不動産を購入した後に局地的に宅地開発が実施された場合、購入当時の土地の価値と市街地価格指数が合わない地域も存在します。
売却した不動産周辺の地価と市街地価格指数の推移が異なる場合、指数を用いて算出した金額の合理性が乏しいため、取得費の計算に利用することはできません。
そのため指数と路線価などを比較し、同じ水準で地価推移していることを確認してください。

市街地価格指数以外から不動産取得費を確認・計算する手段もある

不動産購入金額は売買契約書以外にも、領収書や不動産仲介手数料に記載されていることもありますし、ローンを組んで不動産を購入した場合、抵当権を設定する際の資料などで購入金額を確認できるケースもあります。
市街地価格指数による不動産取得費の計算は最終手段なので、買主や不動産仲介業者から契約書のコピーを入手するなど、実際の購入金額が確認できる資料をできる限り集めてください。
そして通帳やメモ書きなど、購入金額を確認できる資料がなかった場合、市街化価格指数から不動産取得費を求めてください。

まとめ

相続で取得した不動産は取得費が不明なことが多く、概算取得費で譲渡所得を計算すると多額の譲渡所得税を支払うことになります。
市街地価格指数により不動産取得費を計算すれば経費計上できる金額は増えますし、購入当時の地価の方が高かった場合、売却利益(譲渡所得)が発生しないため、譲渡所得税を支払わずに済みます。
一方で、市街地価格指数を用いた計算は税務署のチェックが入りやすく、取得費の金額の算出方法が不明確であったり、合理性に欠けていると不動産取得費が否認される可能性もありますので要注意です。
不動産の売却金額が大きいほど、市街地価格指数を利用するメリットと否認された際の影響は大きいですので、不動産申告に関するご不明点がありましたらマルイシ税理士法人へお気軽にご相談ください。

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