悩まないための相続の基礎知識

●専門家のインタビュー〜藤井幹久税理士〜

相続の時にやらなければならない主要な手続きとその流れを時系列順に紹介し、その一つ一つに関して必要な書類や提出先をご紹介していきます。亡くなった人の家を整理するとトラック数台分の廃棄物が出てくるという話はよく聞きますが、亡くなった人の相続におけるさまざまな事務手続きもこれと同じように種類は多く、量も多く、おまけに一つ一つの処理内容も複雑です。相続の基礎知識として、ぜひご一読ください。

相続の手続きといえば税務署へ提出する相続税の申告書をイメージされる方が多いと思いますが、申告書以外にも数多くの書類や届出書を市役所や区役所・法務局などへ提出しなければなりません。

さらに難解なことに、これらの作業はそれぞれやらなければならない期限がバラバラで、中には相続登記のように期限のないものすら含まれています。

そこで本日は、相続の時にやらなければならない主要な手続きとその流れを時系列順に紹介し、その一つ一つに関して必要な書類や提出先をご紹介していきます。

相続の手続き一覧

相続がはじまると、葬儀や四十九日の法要などと並行してさまざまな手続きを進めていかなければなりません。そこでまず、どのような手続きがどれほどあるのかをざっと眺めていただき、手続きすべき期間とその全体像を把握していただきます。

手続きすべき期限(目安)
内  容
死亡から7日以内
死亡診断書の受け取り
死亡届の提出
死亡から14日以内
年金受給停止の手続き
健康保険の資格喪失手続きと健康保険証の返却
世帯主変更届の提出
介護保険資格の喪失届
公共料金などの変更・解約
死亡から3ヶ月以内
相続放棄または限定承認
死亡から4ヶ月以内
所得税の準確定申告
死亡から10ヶ月以内
相続税の申告
死亡から1年以内
遺留分滅殺請求
死亡から2年以内
葬祭費、埋葬料の請求
高額医療費の請求
死亡から5年以内
遺族年金の受給申請
相続税の税務調査

ご覧いただけばお分かりのとおり、亡くなってから7日以内に行なわなければならないものから始まり、最長で約5年先までスケジュールが続きます。

これらのどれか一つでも失念してしまうと、他に大きな影響を与えてしまう可能性もあるため、確実に一つ一つ処理しながら最後まで進めていかなければなりません。

なお、これらの具体的な手続き内容につきましては、次章でご紹介いたします。

相続手続きの流れとその期限について

それでは前章の一覧表に基づき、一つ一つの手続きの内容とその期限について解説していきます。

死亡から7日以内にやるべきこと

死亡から7日以内にやるべきことは、以下の2点です。

①死亡診断書の受け取り

大切な家族が亡くなった場合、死亡日より7日以内に死亡診断書を病院で発行してもらいます。死亡診断書はB4サイズで、用紙の左側が「死亡届」、右側が「死亡診断書(死亡検案書)」となっているものが一般的です。

なお、死亡診断書は後日必要となることがあるため、複数枚コピーをとっておくとよいでしょう。

②死亡届の提出

死亡診断書とワンセットになっている死亡届を作成します。なお記載内容は以下のとおりです。

(亡くなった方の)氏名と生年月日
亡くなった場所
住所
本籍
亡くなった人の夫または妻の有無
死亡した時の世帯のおもな仕事と死亡した人の職業・産業
届出人の住所、本籍、署名、生年月日、連絡先
火葬する火葬場の名前
届出人欄に記載した人と死亡者との関係

死亡届は死亡日より7日間以内に、死亡した地域もしくは本籍地の市区町村役場へ提出します。死亡届の届出人は、親族、同居人、地主、家屋管理人、土地管理人等、後見人、保佐人、補助人、任意後見人などが一般的ですが、葬儀社が届け出を代行してくれる場合もあります。

なお、提出時には届出人の印鑑が必要になります。

死亡から14日以内にやるべきこと

死亡から14日以内にやるべきことは、以下の5点です。

①年金受給停止の手続き

亡くなった方が年金を受給していた場合、年金の受給停止手続きをおこないます。これを行わないまま受給し続けてしまうと、後日まとめて返済しなければならなくなりますし、最悪の場合年金の不正受給で刑事罰を受けることになってしまいます。

なお、亡くなった方が国民年金を受給していた場合は死亡日より14日以内に、厚生年金を受給していた場合は10日以内に、亡くなった方の住所地を管轄している日本年金機構にて手続きをおこないます。

手続き時に必要なものは以下のとおりです。
年金証書
死亡診断書または埋葬許可証
戸籍謄本もしくは除籍謄本
個人と年金請求者の住民票写し

また、未支給年金(年金のまだ支給されていない分)がある場合には、年金受給停止の手続きと同時に未支給年金の受給手続きもおこないます。

②健康保険の資格喪失手続きと健康保険証の返却

亡くなった方が加入していた健康保険の喪失手続きをおこない、健康保険証を返却します。なお、健康保険には、以下の3つの種類があります。

国民健康保険
後期高齢者医療保険
被用者保険(会社員などの加入している健康保険)

亡くなった方が国民健康保険に加入していた場合

亡くなった方が国民健康保険に加入していた場合、死亡日から14日以内に亡くなった方の住所地の市区町村役場に国民健康保険被保険者資格喪失届を提出し、同時に国民健康保険被保険者証を返却します。

喪失届は市区町村役場の窓口で入手することができ、提出時には戸籍謄本や世帯主の印鑑、運転免許証などの本人確認書類が必要になります。

なお、未納保険料がある場合は相続人に請求され、納め過ぎていた場合は相続人に還付されます。

亡くなった方が後期高齢者医療保険に加入していた場合

亡くなった方が後期高齢者医療保険に加入していた場合、死亡日から14日以内に亡くなった方の住所地の市区町村役場に後期高齢者医療被保険者資格喪失届を提出し、同時に後期高齢者医療被保険者証を返却します。

喪失届は市区町村役場の窓口で入手することができ、提出時には戸籍謄本や世帯主の印鑑、運転免許証などの本人確認書類が必要になります。

亡くなった方が被用者保険に加入していた場合

亡くなった方が被用者保険に加入していた場合、死亡日から5日以内に、亡くなった方の勤務先の総務や人事の担当者などが退職手続きと並行して被用者保険の資格喪失手続きをおこないます。

健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届を勤務先の担当部署などから受け取り、必要事項を記入・押印し、同時に健康保険被保険者証を返却します。

③世帯主変更届の提出

亡くなった方が3人以上の世帯の世帯主であった場合、死亡日から14日以内に亡くなった方の住所地の市区町村役場に世帯主変更届を提出します。

なお、残された世帯員が1人になってしまう場合や、残された世帯員が15歳未満の子供とその親権者の2人である場合には、この届出を提出する必要はありません。なお、変更届は窓口で入手することができます。

また世帯主変更届の提出時には、届出人の印鑑と届出人の身分証明書が必要となります。

④介護保険資格の喪失届

亡くなった方が介護保険の被保険者であった場合、死亡日から14日以内に亡くなった方の住所地の市区町村役場に介護保険の資格喪失届を提出し、同時に介護保険被保険者証を返却します。なお、喪失届は市区町村役場の窓口で入手することができます。

また、未納保険料がある場合は相続人に請求され、納め過ぎていた場合は相続人に還付されます。

⑤公共料金などの変更・解約

亡くなった方の銀行口座が凍結されてしまうと、公共料金などの引き落としができなくなってしまいます。利用料金が引き落とされないまま放置しておくと、最終的には全てのサービスが停止されてしまいます。

そのため、できるだけ速やかに支払方法の変更と解約をおこないます。なお公共料金など変更が必要なおもなものは以下のとおりです。

電気・水道・ガスなどの公共料金
携帯電話、インターネット回線など
NHK
クレジットカード
各種保険
家賃・駐車場代・管理費など

【次ページ】死亡から3ヶ月以内にやるべきこと

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