不動産に強い税理士が徹底解説

不動産経営の法人化のメリット・デメリットを不動産税理士が解説

個人の不動産賃貸業から発生する家賃収入は、不動産所得に該当し、原則として確定申告をする必要があります。 ここで、この家賃収入が多くなると、毎年の税金(所得税等)と将来の税金(相続税)が高くなってしまうという問題点があります。 その対策として、法人で不動産賃貸業を行うこと(法人化)により、毎年の税金や将来の税金を大きく節税することができる場合があります。

個人と法人の違い

法人化によるメリット・デメリットを解説する前に、個人と法人で税金計算の仕組みがどのように異なるかを抑えておく必要があります。
個人で不動産賃貸業を行った場合、確定申告を通じて主に所得税が課税され、法人で不動産賃貸業を行った場合には、決算申告を通じて主に法人税が課税されます。

所得税の計算方法

個人で不動産賃貸業を営む場合には、所得税が課税されます。
所得税の計算方法は、次のとおりです。

所得とは、1年間の給与や家賃などの収入の合計から経費を引いた「1年間の利益(儲け)」を言います。
所得控除とは、医療費控除や扶養控除など、個人の事情により税負担を軽くするものです。
税率は、超過累進税率と言い、所得が大きくなるにつれて、段階的に税金が高くなるように設計されています(課税所得に応じて5%~45%)。
所得税の計算のポイントは、給与や家賃などの「所得を合計する」ことと、超過累進税率により、「所得が多くなると税率も高くなり、税金が多くなる」ことです。
また、個人には所得税のほかに住民税も課税されますが、住民税の税率は一律10%となります。
また、一定の規模を超えた個人の不動産オーナーには、事業税も課税されます。

法人税の計算方法

法人で不動産賃貸業を営む場合には、法人税が課税されます。
法人税の計算方法は、次のとおりです。

中小法人等(※)の場合の税率は、比例税率となり、課税所得800万円以下の部分は15%、800万円超の部分は23.2%となっています(令和2年12月1日現在)。

法人税の計算のポイントは、所得税のように税率が何段階もあるわけではなく、「所得に応じて2段階の税率が適用される」ことです。

※中小法人等とは、原則として期末資本金が1億円以下である法人をいいます。
なお、法人には法人税のほかに住民税や事業税も課税されます。

個人と法人の税率の比較

個人の所得に対して適用される税率と、法人の所得に対して適用される税率とを比較すると、下記のとおりとなります。所得が低い段階では個人の税率の方が低くなり、所得が高い段階では法人の税率の方が低くなります。

法人化を検討した方がいいのはこんな人

今後不動産賃貸業を行うにあたり、以下のような人は法人化を検討した方がいいでしょう。

  • 賃貸規模が大きい又は今後拡大予定がある

すでに個人で1棟マンションや複数のアパートを所有しているなど、不動産賃貸業を大きな規模に行っている場合には、家賃収入も多額であるため、超過累進税率により高い税率で所得税が課税されて毎年の税金の負担が重くなる傾向にあります。
また、現在はそこまで規模は大きくなくても、今後不動産投資を拡大していく予定がある場合には、個人で不動産賃貸業を行うと将来的に税率が高くなる可能性があります。
これらの場合には法人化を検討して、少しでも早くから税負担を軽減できるようにしましょう。

  • 給与所得など家賃収入以外の所得が多い

家賃収入以外に給与収入のあるサラリーマンオーナーも、法人化を検討しましょう。
サラリーマンオーナーは、給与所得と不動産所得が合算されて所得税が計算されるため、不動産所得には高い税率で所得税が課税されることになります。
仮に、給与所得700万円、不動産所得100万円として所得税・住民税を計算すると、超過累進税率により不動産所得に適用される税率が43%となります。これに対し、仮に不動産所得100万円のみだった場合に適用される税率は15%となります。
※いずれも所得控除及び復興特別所得税は考慮しておりません。
このように、他に給与所得があり既に個人の所得が高い場合には、不動産事業を法人で行い、税負担を軽減する方法が考えられます。

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法人化の形態

それでは、実際に法人化をする場合には、どのような形態の法人を設立をしたらよいのでしょうか。

法人化をする際の3つの方式

不動産オーナーが法人を設立する場合、以下の3つの方式となります。

⑴管理受託方式
⑵サブリース方式
⑶不動産所有方式

それぞれの方式の詳細は、以下の通りです。

⑴管理受託方式

管理業務(賃料の徴収・清掃等)を受託し、個人オーナーから物件管理料を受け取ります。
管理料は賃料の4~6%程度が目安となります。
一般市場における管理料の相場を上回るような高額な管理料を支払った場合には、個人オーナーにおいて管理料の経費計上を税務署に否認されてしまうリスクがありますので、ご注意ください。
管理受託方式は最も簡単な方式ですが、約95%は個人オーナーの収入となるため、法人への所得移転の効果は小さいです。

⑵サブリース方式

個人オーナーから収益不動産を一括して借り受け、法人は実際のテナントに転貸する方式です。
転貸で得られる賃料と個人オーナーに支払う賃料(サブリース料)との差額が法人の所得となります。
法人に移転できる所得は、転貸賃料の10~15%程度が目安となります。
サブリース料を一般市場における相場よりも低く設定し、法人に多額の所得を移転した場合には、低額なサブリース料が税務署に否認されてしまうリスクがあります。この場合、法人に移転した所得が個人オーナーの所得とみなされてしまうため、ご注意ください。
サブリース方式は⑴の管理受託方式よりも多くの所得を移転できますが、空室や賃料下落等によって転貸借に逆ザヤが発生し、法人側が赤字になってしまう可能性もあります。

⑶不動産所有方式

建物のみ又は土地建物の両方を法人が所有し、株主にその法人を所有させる方式です。
建物(及び土地)が法人の所有になるため、基本的に賃料の100%を法人に移転することができる方式です。

3つの方式の中ではどれがおすすめ?

法人化の形態はこのように3つの方式がありますが、特に⑶の不動産所有方式がおすすめです。
他の2つの方式は、管理報酬やサブリース料との差額として、個人オーナーの家賃収入のうち一部しか法人に移転することができません。これに対し、不動産所有方式は不動産そのものを法人に持たせてしまうわけですから、今まで個人に入ってしまっていた家賃収入をそのまま法人に100%移転できるため、節税の効果が最も高くなると考えられます。
また、管理受託方式やサブリース方式では、法人におけるその管理や転貸の実態を税務署に指摘されることも少なくありません。しかし、不動産所有方式では法人が不動産そのものを所有している事実があるため、その実態を問題視されるリスクもかなり低いと考えられます。

不動産所有方式のポイント

不動産所有方式で法人化をする場合には、次の2つのパターンが想定されます。

①当初から法人で不動産を取得する
②個人で所有している不動産を法人に移転(売却)する

このうち、②のパターンでは、個人から法人へ建物のみを売却することが多いです。家賃収入は建物から得られるため、建物のみを法人へ移転(売却)した方が、移転にかかるコストが少なくて済むなどのメリットがあるためです。
個人から法人へ建物を売却する際、税務上は売却価額を「時価」とする必要があります。一般的には「簿価」又は「不動産鑑定士による鑑定評価額」を時価として、これらの価格で売却するケースが多いです。簿価で移転を行った場合、売却した個人では譲渡税がかかりません。
※簿価とは、その建物の取得価額から減価償却累計額を控除したものとなります。
なお、土地は個人、建物は法人が所有する方式の場合、借地権と底地権における贈与税等の問題が生じないようにするため、「土地の無償返還に関する届出書」の提出などが必要になります。
これらは判断や手続が非常に難しいため、不動産を専門とする税理士に事前に相談することをおすすめします。

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