法人特有の節税対策とは?

【不動産の法人化】不動産管理会社の設立・活用ポイント・節税方法を徹底解説

監修者情報

税理士 藤井 幹久 (ふじい みきひさ)

マルイシ税理士法人 代表社員税理士

専門分野: 不動産税務、相続・事業承継対策、税務顧問、セミナー講師等

不動産をお持ちの方(個人及び会社)の、税理士業務と相続・事業承継対策を専門としています。これまでに10,000件を超える不動産と相続に関する税務相談を行ってまいりました。

管理会社を活用した節税

法人化をして不動産管理会社を経営すると、個人事業ではとることのできなかった法人特有の節税手法を使えます。これらを使うことにより個人事業よりも課税される所得を少なくできる可能性もあります。どのようなものがあるかをみていきましょう。

役員報酬の支給

不動産管理会社を設立してその役員に配偶者や子を就任させて、役員報酬を支給することで家族に所得を移すことができます。これにより、個人オーナーが1人で受けていた家賃収入(所得)を、法人を通じて家族に分散することができます。
所得税は所得が大きいほど段階的に税率が高くなるため(下記参照)、法人化により所得を分散すると、個人1人に適用されていた税率よりも適用する税率は低くなり、家族全体で支払う所得税等の負担を軽減することができます。
ただし、上記のとおり、役員報酬を支給する場合には社会保険料の負担にも注意しましょう。

また、上記の所得分散により、個人オーナー1人に集中していた所得が家族に分散されることになり、税金を支払った後の家賃収入は当然に家族に貯まっていくことになります。
したがって、個人オーナー自身の家賃収入の蓄積(相続財産の増加)を抑制でき、将来の相続税の節税につながります。

これらについて、詳しくはマルイシメディア専門家記事「不動産経営の法人化のメリット・デメリットを不動産税理士が解説」の「法人化のメリット」をご参照ください。

専従者給与との違い

個人事業でも青色申告かつ事業的規模の場合には、青色事業専従者給与として家族に給与を支給できる制度がありますが、こちらは労務の対価として相当な金額までしか経費とすることができません。従業員としての労働の実態と、その労働に対する一般的な給与水準を考慮して判断されます。
これに対し、役員は元々委任契約であるため、勤務状況というよりは経営判断など役員としての務めを果たしているかで、役員報酬の妥当性を判断します。
一般的には、勤務状況と給与との関連性について、役員報酬の方が専従者給与より緩いといわれております。

個人と法人の経費比較

個人よりも法人の方が、認められる経費の範囲が広く解釈されております。
個人では経費とならなくても、法人では本来の業務に要するものであれば経費(損金)とできるものがあります。
個人と法人で経費の取り扱いの異なるものをまとめると、下記の通りとなります。

経営セーフティ共済の活用

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は、取引先の倒産に備えた保険制度です。この共済に加入した場合には、掛金として月額5,000円から20万円まで設定が可能で、掛金総額が800万円に達するまで積み立てることができます。
支払った掛金の全額が法人の経費になり、最大で年間240万円を法人の経費(損金)に計上することができます。
仮に取引先が倒産した場合には、掛金総額の10倍の範囲内(最大8,000万円)で、無担保・無保証で借り入れが可能となります。中途解約した場合でも、12か月以上掛金を納めていればその80%、40か月以上掛金を納めていればその100%が返戻されます。

経営セーフティ共済については、実際には保険としての機能よりも、掛金の経費計上を目的として加入する法人がほとんどです。個人の不動産賃貸業(不動産所得のみの個人)では掛金を経費に計上することができないため、法人化した場合には加入を検討したい制度です。

実態は課税の繰り延べに過ぎない

経営セーフティ共済は、最大で年間240万円の掛金を全額経費(損金)に計上できますが、その反面、解約した際の返戻金は全額が収入(益金)となります。永久に無税としているわけではなく、一時的に課税を繰り延べている(先送り)に過ぎませんので、誤解のないようご注意ください。

生命保険の活用

生命保険の中にも、課税を繰り延べながら資金の積み立てができるものがあります。
生命保険のうち積み立て機能があるものについては、その保険料の一部しか経費にすることはできませんが、社長の死亡などの経営上のリスクに備えることができます。
個人では生命保険に加入して保険料を支払っても経費にはならず、所得控除での取り扱いとなり、控除額は保険の種類ごとに年間4万円又は5万円が上限とされております。
法人でも、保険の内容によって保険料のうち経費に算入できる金額は制限されますが、それでも個人の所得控除よりは大きくなることが多いです。
ただし、セーフティ共済とは異なり、解約した際に支払った保険料の全額が戻ってくるわけではありません。将来の返戻率にも注意しながら生命保険への加入を検討しましょう。

また、積み立てにはなりませんが、法人で掛け捨ての保険に加入する手法もあります。
定期保険や医療保険などは、解約返戻金が貯まらないタイプの保険ですが、これらの保険料は原則として全額が経費になりますので、個人で加入して所得控除を受けるよりも経費性が高くなります。
ただし、実際に保険事由が発生して受け取った保険金は、法人の収入(益金)となってしまうため注意が必要です。(個人で加入して保険事由の発生により保険金を受け取った場合には原則として非課税です。)
その際には、法人が受け取った保険金を、お見舞金などの名目で役員に給付することになりますが、社会通念上相当な範囲を超えるお見舞金は、受け取った役員に給与課税されてしまう可能性がありますのでご注意ください。
また、お見舞金の支給などについて事前に社内規定を整備しておく必要があります。

退職金制度の活用

個人オーナーの場合には、自分自身に対し、給与や退職金を支払うことはできませんが、法人の場合には役員に退職金を支給することができます。
ただし、法人が支払った退職金は、いくらでも経費にできるわけではありません。役員に支払った退職金のうち「相当額」までは経費となりますが、不相当に高額な部分は経費とは認められません。
税法上の明確な規定はありませんが、一般的に「相当額」は下記の算式で計算するといわれております。

  • 役員の最終報酬月額×勤続年数×功績倍率

※功績倍率は、同規模の同業他社との比較により平均的な倍率の設定が望ましく、一般的に社長の場合には2~3倍になるといわれております。

実際には、形式として退職給与規定を作成し、相当額の範囲内で退職金を支給することになります。
上記で解説した経営セーフティ共済や生命保険について、返戻金や保険金の受給のタイミングで退職金を支給すれば、返戻金等の収入を退職金の経費で打ち消すことができるため、その年度の所得の増加を抑えることができます。

退職金は受け取った個人でも有利

生前に退職した場合、退職金を受け取った個人は「退職所得」として課税されます。退職所得には所得税が課税されますが、収入に対する税金の負担はかなり低くなります。
退職所得は勤続年数に応じた控除があり、控除後の2分の1しか課税対象となりません。さらに他の所得とは合算せずに税額計算(分離課税)できるため、超過累進税率ではあるものの低い段階の税率が適用される可能性が高いです。
また、死亡後に遺族が退職金を受け取った場合についても、税制上は優遇されております。死亡退職金は「みなし相続財産」として相続税の対象になりますが、相続人の数に応じた非課税枠があり、一定額までは相続税が課税されないこととなっております。

役員が受け取る役員報酬には、所得税・住民税が課税され、社会保険料も徴収されます。高額な役員報酬を支払い続けるとこれらの負担も大きくなるため、とるべき役員報酬の一部を将来の退職金の支給に回して、少しでも負担を少なくするなどの戦略も検討しましょう。

【次ページ】不動産管理会社の活用事例

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